ダブルスプリット、という言葉は、ダブル(二つの)スプリット(分ける)となり、文字通り一日に二回に分けてトレーニングを行う方法です。

しかし、「そんなにトレーニングして大丈夫?疲れすぎてコルチゾールでない?」といった不安もあるでしょう。

この記事では、そんな質問・不安を含めた、ダブルスプリットを行う際の注意点とルールをできるだけわかりやすく説明していきます。

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ダブルスプリットによる筋肥大

筋肉の肥大

筋トレを一日二回に分けて行う方法である『ダブルスプリット』。ボディビルダーの中ではたまに行われている比較的メジャーなトレーニング方法です。

筋トレを二回するんだから、増える筋肉も二倍になるか、というとそう単純な話ではありません。

ダブルスプリットを上手くトレーニングルーティーンに取り込むことができれば、より頻繁に筋肉を同化させる作用(アナボリズム)を上昇させることに繋がります。

しかし、一日二回するという事は、それだけ体に高いストレス負荷がかかり、オーバートレーニングになってしまう可能性があります。

そのため、この記事ではどのように身体のストレス反応に対応していくのか等を中心に解説していきます。

身体に対するストレス負荷

筋トレを行うと、筋肉にはストレスがかかります。ダブルスプリットを行う場合には、『良いストレス負荷』と『回復』のバランスをうまく保つ必要があります

二回トレーニングをするという事は、トレーニング量を二倍にすることではありません。筋肉を破壊するのではなく、刺激することが目的だからです

人間の体はストレスに反応しますが、その反応がポジティブ(良性)なものかネガティブ(悪性)なものかは、ストレスの量で決まります。

人間にかかるストレスは意図的・計画的なものとそうでないものに分けられます。

例えば、寝ている時に急に大きな音で起こされたらストレスがかかりますが、それは意図的なものではありませんよね。

逆に筋トレは、バーベルやダンベルを意図的・計画的に動かしてストレスをかけている状態です。つまり、筋トレは自分で管理・統制が可能なストレス負荷である、という事です。

身体に対する回復

トレーニングにおいて、SRAの原則、というのが用いられます。SRAとは、S(stimulus、刺激)R(recovery、回復)A(adaptation、適応)から成っており、人体がどのようにトレーニングに反応するかを説明した専門用語です。

トレーニングをした後筋肉は疲労し一旦曲線は下がりますが、回復を経て超回復が起こります。

通常のトレーニングの回復過程。Zatsiorsky & Kraemer, 2006

神経疲労・筋疲労(fatigue)が大きければ大きいほど、回復(recovery)は長くかかり、回復方法や栄養摂取は万全でなければなりません

『疲労』というのはトレーニングの副産物であり、体が反応するのはトレーニングの『刺激』です。疲労は関係ありません。ですから、大事なのはどのような刺激を筋肉に与えるのか、であって、どのように感じているのかは重要でないという事です。

上の図が表しているのは標準的なトレーニングの回復過程です。ダブルスプリットの回復(下の図)を比べてみると、疲労は少なく収まり、少々の回復があってから二回目の下降・上昇が見られます。

一回目のトレーニングでは疲労が少なく、回復が始まってからまた4~6時間後に刺激を与えるという事です。

筋トレと回復のサイクル比較図
ダブルスプリットの場合の回復曲線。
supercompensation(超回復)はグリコーゲンと呼ばれるエネルギー源の補充の度合いを表します。

赤線がダブルスプリットの回復を表しています。二回の曲線の下降が、超回復(supercompensation)のピークをより大きくしているのが分かりますね。

超回復が行われると、トレーニングで使用された筋グリコーゲン(エネルギー源)の補充が素早く行われるため、次のトレーニングに向けて筋肉の準備が進むわけです。

必ずしもこのような曲線になるわけではありませんが、イメージは掴めたと思います。次は、どのようにストレスに対処していけば良いのか、です。

ストレスを上手く対処しよう

グラスを満たす水
水が溜まる=トレーニングをするほどグラスの水=ストレスは増えます。

トレーニングから受けるストレスはコントロールしなければいけません。それでも、筋トレを必死でしていると、どうしてもやり過ぎてしまって回復を十分に摂らない、という事もままあるのではないでしょうか。

身体のシステムをグラスと考えてみましょう。

トレーニングのストレスは、そのグラスを満たしていきます。栄養摂取や睡眠などの助け等の自然回復が、グラスを空にします。グラスを溢れさせないように(容量限度を超えないように)、上手くグラスの水の量をギリギリで留めるのです。そうすれば過剰にストレスを体にかけずに一貫した適応が得られるでしょう。

勿論、個人によってストレスのキャパシティは違います。トレーニーの中にはビール瓶のような大きなものを持っている人も入れば、おちょこのような小さなキャパシティしかない人もいます。

また、普段から肉体的・精神的ストレス(悪いストレス)を受けていて、既にグラスが一杯の人もいるでしょう。ダブルスプリットを行う場合には、一回一回のトレーニングで良質なストレスをグラスに満たし、悪いストレスを最小限に抑える事を意識しなければいけません。

コルチゾールを抑える

ストレスの事を話すと、僕たちトレーニーはコルチゾール(ストレスホルモン)の事をよく考えると思います。

慢性的に上昇するコルチゾールは、基礎代謝(何もしない時に消費されるカロリー)の低下などの多くのネガティブな効果をもたらします。

コルチゾールはノルアドレナリンをアドレナリンに変換する働きもあり、しっかりと管理を行わないと体の整調が妨げられます。

更に、コルチゾールは筋繊維からエネルギーを集め、筋肉を分解する作用も持っています。

しかし、あまりコルチゾールを悪く言ってもいけません。体内ではとても役立つホルモンであり、血糖値を安定させる等の重要な役割もあります。筋成長を最大限にするためにも、コルチゾールを低くし過ぎず、正常な値を保てるように管理するのが一番良いでしょう。

一日に二回のトレーニングはコルチゾールの管理にも有用です。一回のトレーニングは短い時間で済むため(40~50分以下)、コルチゾールの反応を抑えると同時に、テストステロンのレベルを高く保つことができます

トレーニングと筋合成

三頭筋のトレーニング

筋肉の合成は、基本となるメタボリックストレス(metabolic stress)、メカニカルテンション(mechanical tension)、ティッシュブレイクダウン(tissue breakdown)の3つを含むいくつかの要素で引き起こされます。これらの要素が筋タンパクの合成を促し、『正のタンパク質バランス』と呼ばれる状態になります。

『正のバランス』はより筋合成が行われている状態で、逆に『負のバランス』は筋分解の状態です。トレーニングは、このタンパク質バランスにどのような影響を与えているのでしょうか。

トレーニング前

もし栄養管理とトレーニングが最適化されているなら、体は正のバランスにあります。つまり、筋分解よりも筋合成の方が行われている状態です。

トレーニング中

体は、新しいタンパク質の合成によって、負のバランスにあります。つまり、トレーニング中は筋肉は作れないという事です。

筋分解はトレーニングが続いていくと筋合成の値を超えてしまします。長くトレーニングを続ければ続けるほど、不必要な分解が起こってしまうという事です。この点に関しては、ダブルスプリットのトレーニングで一回を短くする方法が有用であるという事が分かりますね。

トレーニング後

トレーニング後少しの間は、タンパク質バランスは新しいタンパク質の合成が止まった事により、負の状態のままです。数時間の後(2~3時間ほど)タンパク質合成は筋分解を超えるために急激に上昇し、トレーニング前のレベルよりも高い状態の正のバランスまで上がります。

ダブルスプリットは、筋分解を上手く対処しながら筋合成を頻繁に増やすことができます。この過程は、タンパク質や炭水化物、ビタミン・ミネラルなど、適切な栄養摂取をすることで更に促進をすることができます。

ダブルスプリットの8つのルール

ルールを知っておく事。

ダブルスプリットをする際に、正しい方法と間違った方法があるため、正しく行うための8つのルールがあります。

  1. 適切な種目を選ぼう
  2. 適切なセット数を組もう
  3. 適切な重量を選ぼう
  4. 十分な回復期間を摂ろう
  5. 十分な睡眠を取ろう
  6. 一部位に特化してみよう
  7. サイクルを作ろう
  8. 回復は最優先にしよう

1.刺激を最大限に引き起こす種目を選ぼう

刺激をもたらすことが一番の目的ですから、それに合った筋トレ種目を選ぶ必要があります。しかし、トレーニングの中には比較的早く『グラスを満たす』ものがあるので、上手く組み合わせを探しましょう。

  • 重いコンパウンド種目はグラスを早く満たす
  • マシーン種目のグラスを満たす速度は遅い
  • アイソレーション種目のグラスを満たす速度は遅い
  • 重いアイソメトリックス種目はグラスは非常に早く満たす
  • コンプレッション種目(上からの圧がかかる種目)は、トラクション種目(下から引く種目)よりもグラスを早く満たす

2.適切なセット数でトレーニングを行おう

  • トレーニング1:通常のセット数の70%ほど
  • トレーニング2:通常のセット数の40~50%ほど

もし普段一回のトレーニングで24セットしているなら、ダブルスプリットをする時は26~29セットを二回で行う事になります。いつものセット数よりも10~20%多くすることになりますね。

更に簡潔にするなら、一時間のトレーニングの代わりに、一回目のトレーニングで45分、二回目で30分のトレーニングを行えば、合計1時間と15分のトレーニングをすることになります。

3.適切なトレーニング強度(重量)を選ぼう

それぞれのトレーニングで最適なレップ数と重量を扱いましょう。目的や部位によって様々な方法はありますが、例えば同じ部位(同じ動き)の筋肥大を狙うなら:

  • トレーニング1:コンパウンド種目に焦点を当てて、5~7レップを狙って行う。
  • トレーニング2:コンパウンドとアイソレーション(orマシーン)種目を組み合わせて、12~20レップを狙って行う。二回目では、収縮種目等のアイソレーション種目だけでも良い。

4.十分な回復を確保しよう

一回目と二回目のトレーニングの間に十分な回復期間を設けることで、体内の酸化状態やアンモニアなどを取り除き、疲労から回復することができます。加えて、コルチゾールの分泌を抑えると同時にテストステロンのレベルも最適化することができます。

更に、一回しかトレーニングを行わない場合に比べてより高い質でのトレーニングが行えます。トレーニングを長い時間続けていると、最後の方のセットは上手く重量を扱えない、といった事はありがちです。一回目では、興奮と刺激が覚めないうちに終わらせる必要があります

もし最低4時間の休憩がはさめないのなら、ダブルスプリットはしない方が良いでしょう。4~6時間が回復には最適といわれています。6時間以上でも良いですが、回復の過程が遅くまで続いてしまいます。

5.睡眠を十分に摂ろう

睡眠をとっていない状態で筋トレをするのはパンクしたタイヤでレースをしようとするようなものです。先ずはしっかりと睡眠をとって回復を優先しましょう。

6.一部位に特化させてみる

それぞれのトレーニングでは、同じ筋肉群か同じ運動パターンに焦点を当てます。全部位を一日ですることもできるし、弱点の部位を二回に分けて、集中的に刺激する日にもすることができます。

多くのトレーニングスプリットは、一日二回のトレーニングを行う事ができます。自由にルーティーンを決めましょう。

7.2週間続けて、1週間休む

多くの人には、2週間ダブルスプリットを続けて1週間普通のトレーニングに戻す、というサイクルが良いでしょう。サイクルに関しては試してみないと判断が難しいため、実験してみましょう。一週間ごとに変える方法や、3週間ダブルスプリットを続けることができる人もいます。

4~6週間ごとに、筋肉や回復期間の様子を見て、休養をはさむ必要もでてくるため、自分の体と相談しましょう。

8.回復を優先させよう

ダブルスプリットはかなりの筋肉痛を引き起こします。また、自分ではわかりにくい周辺的な痛みや神経疲労などもあるため、回復に専念するべきです。最初にやり過ぎると筋肉を傷める原因にもなるし、睡眠や食事習慣もコントロールができなくなります。

ですから、睡眠やストレッチ、栄養摂取など基本的な事は怠らないようにしなければいけません。できれば、摂取カロリーは消費カロリーより多い方が良いでしょう。ダブルスプリットはエネルギーを多く使い、疲労回復のためにもより多くの栄養が必要になるからです。

まとめ

ダブルスプリットを行う際のポイント
  1. ダブルスプリットを行うには、ストレス反応と回復をしっかり理解する必要がある。
  2. 上手く活用すればダブルスプリットは筋合成をより促進させることができる。
  3. それぞれのトレーニングでセット数・レップ数・重量をコントロールする。
  4. 基本的な睡眠・ストレッチ・栄養摂取は怠らない。

ダブルスプリットは、アーノルドシュワルツェネッガーやジェイカトラーといった有名なボディビルダーも導入していたトレーニング方法です。

最大限に活用することができれば、更なる筋肥大を望めるかもしれません。

一方で、筋肉痛や疲労とのバランスもとる必要があるので、簡単では無い事は覚悟しておいた方が良さそうです。

では、また。