物質が化学反応を起こすときに必要となるのが活性化エネルギーだが、活性化エネルギーを多く必要とする反応も、人間の生体内には存在する。

その活性化エネルギーの要求を低くし、化学反応を助ける役割を担っているのが、酵素である。

酵素の助けを借りて化学反応を起こす物質を基質とよび、基質1つ1つに対して、それに対応する活性部位を持った酵素が存在する。

そのため、基質の数だけ酵素が存在し、そのことを基質特異性と呼ぶ(1基質←1酵素)。

酵素は、一定の条件下であれば、同じ化学反応に対して何度でも作用できる(使い回しが可能である)。

酵素はタンパク質部分(アポ酵素)と、補酵素(ビタミンB群など)・補欠分子族(金属など)からなっている。

酵素の大部分を占めるのはタンパク質であるため、熱っしたりや酸・アルカリを加えたりすると、変性を起こし、酵素特性の失活に繋がる。

酵素が働くための条件としては、温度とpHがある。

  • 温度:37℃前後で最も活性がたかくなるものが多い
  • pH:中性(pH7)付近で活性が高くなるものが多い(ペプシンやトリプシンなどは例外)

酵素には、アロステリック部位と呼ばれる部位があり、この部位に特定の物質が結合することで、酵素の活性部位の形が変わる。変化した酵素をアロステリック酵素と呼び、酵素反応の最終産物が過剰に生成されている場合などに起こるフィードバック調節などの際に変化が起こる。

酵素の種類には、体内にある潜在酵素と、体外から取り入れる食物酵素がある。主要な体内の酵素は以下の表の通りである。

酵素の名前 存在する場所 はたらき
アミラーゼ 唾液、膵液 など 摂取したデンプンを分解
マルターゼ 小腸の細胞 マルトースを分解
ラクターぜ 小腸の細胞 ラクトースを分解
スクラーゼ 小腸の細胞 スクロースを分解
リパーゼ 膵液など 中性脂肪を分解
ペプシン 胃液

タンパク質を分解(ペプシンはpH2、トリプシン・キモトリプシンはpH8くらいで働く)

トリプシン 膵液など
キモトリプシン 膵液

食物から体内に取り入れるものの代表的なものとして、パイナップルからブロメリン、パパイヤからパパイン、キウイからアクチニジン(いずれもタンパク質を分解する働き)、わさびやだいこんからミロシナーゼ(辛味成分であるアリルイソチオシアネートを生成)などがある。

体内に存在する消化酵素のうち、タンパク質分解酵素は、普段は不活性型の形で存在し、食物の摂取によって活性型に変わる様にできている。