スーパー等で、「特定保健用食品」という表示を見かけることはありませんか?

特定保健用食品は、一般的に「健康食品」と呼ばれるものの1つで、健康食品の種類は複数あります。

さらに、「健康食品」と呼ばれる食品の中には、法律に基づいて作られている食品と、それ以外(法律に基づくものではない)の食品があります。

種類を理解しておくことで、健康食品の利用も正しく行うことができます。

今回の記事では、法律に基づいて製造されている食品について解説していきます。

3種類の保健機能食品

保健機能食品とは、食品表示法という法律に基づいて定められた食品表示基準というルールの中で示されている言葉で、以下の3つに分類されます:

  1. 特定保健用食品(トクホ)
  2. 栄養機能食品
  3. 機能性表示食品

他に似た名前の表示がありますが(健康補助食品など)、法律によって定められているものではありません。

国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たしているものが今回解説する保健機能食品と呼ばれるものです。

今回は、上記した3つの保健機能食品について見ていきましょう。

1. 特定保健用食品

いわゆる「トクホ」と呼ばれている特定保健用食品は、体の機能や活動に影響を与える生体調節機能(食品の三次機能)を含み、特定の保健の目的が期待できる食品に表示があります(特定保健用食品の表示は、審査によって有効性が認められた食品にしかありません)。

食品の生体調節機能は、食品内の成分が生活習慣病などの病気の予防につながる機能のことで、以下のような目的と、それに対する成分があります。

お腹の調子を整える オリゴ糖、乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維各種(難消化性デキストリン、オオバコ種皮など)
血圧を改善する ラクトトリペプチド、サーディンペプチド、カゼインドデカペプチド、γ-アミノ酪酸(ギャバ)
血糖値を改善する 難消化性デキストリン、小麦アルブミン
コレステロール値を改善する キトサン、植物ステロール、大豆たんぱく質
歯の健康を改善する マルチトール、エリスリトール、緑茶フッ素
骨の健康を改善する フルクトオリゴ糖、カルシウム、大豆イソフラボン、ポリグルタミン酸
ミネラルの吸収を良くする クエン酸リンゴ酸カルシウム、カゼインホスホペプチド
中性脂肪を減らす EPA・DHA、中鎖脂肪酸、ウーロン茶重合ポリフェノール
複数の効果を持つ 低分子化アルギン酸ナトリウム、乳果オリゴ糖、フルクトオリゴ糖

特定保健用食品で良く売られているものとしては、明治ブルガリアヨーグルト(乳酸菌によってお腹の調子を整える)、ヤクルト400(乳酸菌シロタ株でお腹の調子を整える)、キシリトールガム(キシリトールやリン酸一水素カルシウムなどの成分で歯の健康を保つ)などがあります。

明治ブルガリアヨーグルト

また、複数の保健機能が期待できるものでは、コカコーラ・からだすこやか茶W(難消化性デキストリンにより脂肪の吸収を抑え、糖の吸収を穏やかにする)、伊藤園・カテキン緑茶500(茶カテキンにより体の脂肪をつきにくくし、悪玉コレステロールを減らす)などがあります。

からだすこやか茶W

特定保健用食品として販売されるまでには、申請・審査・許可の3つの行程を経る必要があります。

  1. 申請:申請者は、特定保健用食品の概要を決定し、商品のデザインをする。また、有効性や安全性の検証をヒトを用いた試験で行い、申請書にまとめる必要がある。
  2. 審査:消費者庁が申請の内容を審査し、消費者委員会が有効性に関する確認を、食品安全委員会が安全性に関する確認を行う。
  3. 許可:審査の結果、問題が無い場合は、消費者庁から許可証が交付される。商品は許可内容に沿って表示して販売される。

表示事項

  • 商品名
  • 特定保健用食品である旨
  • 許可を受けた表示内容
    • 1日あたりの摂取目安量
    • 摂取上の注意
    • 「食生活は、主食、主菜、副菜をキホに、食事のバランスを」の文言
  • 許可証票(マーク)

トクホマーク

2. 栄養機能食品

栄養機能食品とは、ビタミンやミネラル、脂肪酸などの特定の栄養素の補給のために利用される食品のことを指します。

  • ビタミン13種(ビタミンA, B1, B2, B6, B12, C, D, E, K, 葉酸, ナイアシン, パントテン酸, ビオチン)
  • ミネラル6種 (亜鉛・カリウム・カルシウム・鉄・銅・マグネシウム)
  • n-3系脂肪酸

規格基準の量の栄養素を含んでいれば栄養機能食品として申請できるため、生鮮食品(鶏卵以外)やサプリメント、加工食品などの形態をとることができます。

栄養機能食品の特徴としては:

  1. 上記のビタミン、ミネラル、脂肪酸のうちどれか1つ以上を規格基準量含んでいること
  2. 特定保健用食品のように、国に申請し、許可を得る必要はない
  3. 表示するときには、決められたルールに沿って表示をしなければならない

表示事項

  1. 栄養機能食品である旨
  2. 栄養成分の名称・機能
  3. 1日あたりの摂取目安量
  4. 摂取の方法
  5. 摂取する際の注意事項
  6. 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言
  7. 消費者庁長官の個別の審査を受けたものではない旨
  8. 1日当たりの摂取目安量が栄養素等表示基準値に占める割合
  9. 栄養素等表示基準値の対象ん年齢および基準熱量に関する文言
  10. 栄養成分量および熱量
  11. (生鮮食品の場合)保存の方法

3. 機能性表示食品

3つ目の機能性表示食品とは、科学的根拠に基づいた身体への機能性(脂肪の吸収を抑える、血糖値の上昇を抑えるなど)が、事業者(販売者)の責任において表示された食品のことを指します。

販売前に、食品の安全性・機能性の根拠に関する情報などを消費者庁へ届け出ることで、消費者庁側から表示がわかりやすく消費者に伝わるように情報提供が行われます。

特定保健用食品と違い、国の審査や消費者庁の許可は必要ではありません。

機能性表示食品の特徴としては:

  1. 生鮮食品・加工食品を問わず対象となる
  2. 病気の人、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している人を含む)、授乳婦を対象としない
  3. 販売する60日前までに消費者庁に届け出て受理されれば販売ができ、審査はない
  4. アルコールを含む飲料や、脂質、糖類、ナトリウムの過剰摂取につながるような食品は認められない
  5. 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言や、病気の治療・予防を目的としたものではない旨、国の審査・評価を受けたものではない旨などを表示する

ここで特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品の違いを比べていきます。

特定保健用食品 機能性表示食品
機能表示の例 「糖と脂肪の吸収を抑える」 「糖と脂肪の吸収を抑える機能があることが報告されています
安全性 ヒトを対象とした安全性試験 安全性に関する既存情報の調査
有効性 ヒトを対象とした臨床試験 臨床試験または文献調査
審査 消費者庁による審査を経て、1年〜数年かかる 消費者庁に届け出はするが、審査はされない
許可・販売 消費者庁許可」としてマークをつけて販売できる 企業の自己責任のもとで販売できる

このように、機能性表示食品は、論文などからのデータをもとに、成分が有効である可能性がある科学的根拠を引用することで作ることができます。

つまり、特定保健用食品のように有効性・安全性に関する試験を行わなくても販売することができるということです。

当然、試験を行うためには費用が必要であるため、1つの商品を販売までこぎつけるまでに、特定保健用食品を作る方が会社側にはお金がかかります。

結果的に機能性表示食品に比べて特定保健用食品の方が割高になります。多くの試験と審査をクリアしている商品であるため信頼はできる反面、値段は高くなるわけですね。

特別用途食品

ここまでの3種類の食品は、「保健機能食品」に分類されるものです。

次は、特別用途食品と呼ばれる特別な用途で使用される食品を解説していきます。

特別用途食品とは、幼児、妊産婦、嚥下困難者(食物を上手く飲み込むことのできない人)、病者などの健康上特別な状態にある人の健康の保持もしくは回復に適する食品です。

健康増進法に基づいて、消費者庁長官の許可を受けなければ表示・販売はできません。

表示事項

  1. 商品名
  2. 許可を受けた表示内容
  3. 許可証票

特別用途食品には多くの種類があり、保健機能食品として紹介した特定保健用食品は、特別用途食品にも分類されます。

特定用途食品リスト
消費者庁ホームページより

特別用途食品例

ビーンスタークすこやかM1:乳児の健康維持・発育に欠かせないビタミン・ミネラル類を始めとし、DHAやコリン、イノシトール、シアル酸などの栄養素を配合した乳児用調製粉乳。ビーンスタークすこやかm1

サトウの低たんぱくごはん1/5:腎臓疾患などをもつ、タンパク質摂取制限がある方に適した、通常のごはんのタンパク質量の5分の1含む食品。サトウのごはん

この他にも、嚥下困難者用に作られたゼリーや、脱水症状を起こす病者用に作られた補給液、通常の食事から十分に栄養をとることが難しい方に適した総合栄養食品などがあります。
このように、一般に健康食品と呼ばれるものにも、複数の種類があり、それぞれについて異なる特徴があります。

それぞれの特徴を理解することで、誰に何が必要か・適しているかを判断できるとおむので、ぜひ覚えておくと良いと思います。

さらに詳しいことは、消費者庁のホームページ(食品表示企画)に記載されているため、興味のある方は確認してみてください。