ビタミンと聞くと健康に良さそうなイメージがありますよね。『だけどビタミンを摂っていなくてもなんだかんだ大丈夫なんじゃないか?』と思っている方も多いかもしれません。実は僕もそうでした。
確かに健康にも良いのは確かですが、ダイエットやトレーニングをしている僕たちにとっても非常に重要なものなのです。
特にビタミンBには、様々な効果があります。ですが、一般的にはビタミンB群と呼ばれるように沢山の種類があり、役割もそれぞれに違います。
この記事ではビタミンB群の働きと、ダイエット・トレーニングとの関係性をできるだけわかりやすく解説しています。
- ビタミンB群のそれぞれの働きの違い(B1、B2、B6、B12、その他)
- それぞれのビタミンBを含む食品
- ダイエット・トレーニング効果
ビタミンBとは?
ビタミンBは、体の健康を促進するビタミンの中で、水溶性ビタミンに分類される栄養群です。水溶性ビタミンは水に溶けやすく、体から排出されやすいという特徴を持っています。
ビタミンBは主に細胞の成長・発達、正常な機能に大事な栄養素です。
そんなビタミンBですが、一般的にはビタミンB群と呼ばれるように沢山の種類があり、役割もそれぞれに違います。
では、主要なビタミンB群のダイエットやトレーニングに関連する効能を見ていきましょう。
ビタミンB群のダイエット・トレーニング効果
ビタミンB1(チアミン)と糖代謝
ビタミンB1(サイアミン、チアミンとも)は炭水化物(糖質)を代謝し、エネルギーに変換するのを助ける役割があります。トレーニングの中でパワーを出そうと思うと、糖質がどうしても主なエネルギー源になります。
ですから、ビタミンB1をしっかり摂っていないと筋トレをするときのパワーが出せなくなるという事です。
また、血液中に十分なビタミンB1があると、血糖値やインスリンへの抵抗性がしっかりとコントロールされます。そのため、ダイエットや減量の天敵である血糖値の急上昇などの変動を抑制してくれます。実際に糖尿病の治療薬としての研究も行われているほどです。
・摂取量の目安:男性は1.5mg、女性は1.2mg
・過剰摂取による症状:特になし。積極的に摂りましょう。
・欠乏による症状:食欲が出ない、だるい、体がむくんでいる、記憶喪失等が報告されています。しっかり必要量は摂りましょう。
・多く含まれる食品:生ハム、豚ロース、落花生、大豆、ウナギ、全粒粉パン等
ビタミンB2(リボフラビン)と脂質代謝
ビタミンB2(リボフラビン)主に脂質をエネルギーに変換するのを助ける役割があります。ビタミンB1と同じように、トレーニングの時にパワーを出すのに重要です。
脂質は炭水化物の代わりとなってエネルギーになったり、長時間の運動をする時に使用されるので、役割は少し違います。特にケトジェニックダイエット(高脂質低炭水化物の減量方法)をする時には脂質の代謝は非常に大切な要素になります。
また必須アミノ酸のトリプトファンをナイアシンへと変換する際に必要とされたり、次に説明するビタミンB6の代謝にも関係するため、他の栄養素をしっかりと機能させるためにも欠かせません。
・摂取量の目安:男性は1.7mg、女性は1.4mg
※エネルギーの消費が多い人ほど必要量は増えます。
・過剰摂取による症状:特になし。積極的に摂りましょう。
・欠乏による症状:口内炎や皮膚炎、唇の乾燥などの体の表面の不調、肝臓障害等が報告されています。必要量はしっかりと摂取するようにしましょう。
・多く含まれる食品:豚や牛の肝臓、アーモンド、ウナギ、卵、低脂肪牛乳、ヨーグルト等
ビタミンB6とタンパク質代謝
ビタミンB6は、炭水化物と脂質、タンパク質を筆頭に、体内の100種類以上の酵素の代謝に関わっており、ビタミンB群の中でも最も重要な栄養素と言っても過言ではないとても大切なビタミンです。
その中でも特に、タンパク質(アミノ酸)の代謝を促す役割を担っています。そのため、筋肉の合成・代謝促進や、ビタミンC等によって生成されたコラーゲンの働きの援助、それによる骨・関節等の体の内部構造作成、などなど頑丈な体を作るための多くの働きを統率しています。トレーニーには必須の栄養素であることが分かりますね。
勿論ダイエットしている方も、三大栄養素全ての代謝に重要ですから、ビタミンB1、B2で解説したようなメリットを最大限に得るためには、ビタミンB6も同時に摂取した方が良いという事です。
・摂取量の目安:男性は1.5mg、女性は1.3mg
・過剰摂取による症状:ビタミンB6は摂りすぎると睡眠障害や神経障害の原因になる可能性が報告されているため、一日の摂取量は最大でも100㎎ほどにしておきましょう。
・欠乏による症状:貧血や皮膚炎、腎臓病など。適量摂取するようにしましょう。
・多く含まれる食品:にんにく、かつお、鶏肉(ささ身、胸肉、ひき肉等)、牛の肝臓、ひよこ豆、じゃがいも等
ビタミンB12(コバラミン)
ビタミンB12に関しては、『ビタミンB12はトレーニング前に摂るべきか?』の記事である程度詳しく話しましたが、まとめると、
- ビタミンB12はアミノ酸や細胞の合成・構築、それに伴う筋肉合成に関与する。
- 赤血球の健康維持を助ける。
- 殆どの場合動物性食品に含まれるため、ついでにタンパク質補給もできる。
1、3の効果は筋肉の合成・成長・修復に影響することが分かりますね。
2の効果は分かりにくいですが、赤血球というのは酸素の運搬係なので、赤血球の状態が良ければそれだけ酸素を効率よく筋肉や肺に送り込めるます。つまり、運動のパフォーマンスが良くなります。
ビタミンB12にはコバルトという物質が含まれています。コバルトがエリスロポエチンというホルモンの分泌を促進させ、トレーニングのパフォーマンスを向上させることが研究で認められてきています。それが赤血球と酸素の働きに影響しているわけです。
エリスロポエチンに関して詳しくは『トレーニングに重要となるエリスロポエチンの効果とは?』をご覧ください。
・摂取量の目安:男性、女性共に2.5㎍
・過剰摂取による症状:特になし。積極的に摂りましょう。
・欠乏による症状:貧血や神経障害など。適量は摂るようにしましょう。
・多く含まれる食品:貝類(しじみ、あさり、牡蠣等)、牛や鳥の肝臓、卵、まぐろ、牛乳、ヨーグルト等
ビオチン(ビタミンB7)
ビオチンはビタミンB7とも呼ばれ、三大栄養素をエネルギーに変えるときに代謝をサポートする役割を持っています。ビタミンB1、B2、B6の補助薬としてトレーニングやダイエットに役立ってくれるビタミンBです。
多くの食べ物に含まれ、普通に食事をしているだけで十分に摂取できます。腸内細菌によっても合成が行われるため、ほとんどの方が意識をしなくても一日の摂取量はしっかり守れているでしょう。
・摂取量の目安:男性、女性共に50㎍
・過剰摂取による症状:特になし。
・欠乏による症状:皮膚炎や抜け毛などの原因になり得ます。しかし、欠乏することは非常に稀です。
・多く含まれる食品:鶏の肝臓、落花生、卵、大豆、まいたけ等の多くの食べ物。
パントテン酸(ビタミンB5)
パントテン酸はビタミンB5とも呼ばれ、ビオチンと同じく三大栄養素、特に脂質のエネルギ―変換や分解を主な役割としています。
また、ホルモンや抗体の合成にも関与しているため、正常なホルモンバランスを保ったり、病気から守るといった体の整調機能にも大事な栄養素です。筋トレやダイエットを成功させるには、体が健康でなければなりませんからね。
・摂取量の目安:男性は7mg、女性は5mg
・過剰摂取による症状:特になし。
・欠乏による症状:頭痛や疲労など。ビオチンと同じく腸内細菌により合成されるため足りなくなることは稀。
・多く含まれる食品:鶏や豚の肝臓、鶏胸肉、卵、納豆、しいたけ、アボカド等多くの食物。
ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれ、ビオチン、パントテン酸と同じように三大栄養素の代謝を補助します。細胞の成長や正常な機能にも大切なため、筋肉の成長にも必要となる栄養素です。
ナイアシンは必須栄養素の一つであるトリプトファンからも合成されるため、足りなくなることはあまりないようです。しかし、過剰摂取によって体に影響があるため、サプリメントなどからの摂りすぎには注意が必要です。
・摂取量の目安:男性は16mg、女性は13mg
・過剰摂取による症状:おう吐や下痢、皮膚が赤くなる、など。一日の摂取は35mgほどまでにとどめておくのが良いでしょう。
・欠乏による症状:皮膚病や口内炎など。多くの食品から摂れるため、足りなくなることはあまり無い。
・多く含まれる食品:牛の肝臓、 焼きたらこ、かつお、びんながまぐろ、ピーナッツ、玄米、じゃがいも等多くの食物。
葉酸(ビタミンB9)
葉酸はビタミンB9(ホラシンとも)とも呼ばれ、タンパク質の合成や細胞分裂・増殖にも関係している栄養素です。アミノ酸の代謝にも関わっており、更にビタミンB12と共に赤血球の作成をするため、運動パフォーマンスの向上には欠かせない存在となります。
また、多くの研究によって、抗うつ作用や心臓病、がんなどの疾患から守る役目がある事が分かっているので、健康維持にも必須でしょう。
・摂取量の目安:男性、女性共に250㎍
・過剰摂取による症状:特になし。積極的に摂りましょう。
・欠乏による症状:貧血、口内炎など。適量はしっかり摂りましょう。
・多く含まれる食品:牛や鶏の肝臓、ほうれんそう、えだまめ、うに、アスパラガス、ブロッコリー等
摂取量の目安のまとめ
ビタミンB1 | 1.2-1.5mg | |
---|---|---|
ビタミンB2 | 1.4-1.7mg | |
ビタミンB6 | 1.3-1.5mg | |
ビタミンB12 | 2.5mcg | |
ビオチン | 50mg | |
パントテン酸 | 5-7mg | |
ナイアシン | 13-16mg | |
葉酸 | 250mcg |
まとめ
今回はビタミンB群の効用について話してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。要点をまとめると…
- ビタミンB1は糖質の代謝とインスリンの分泌にかかわる
- ビタミンB2は脂質の代謝と他の栄養素の機能促進させる。
- ビタミンB6はタンパク質を始めとする多くの栄養素、酵素の働きに関係している。
- ビタミンB12はタンパク質の合成と運動パフォーマンス向上に関係する。
- ビオチン、パントテン酸、ナイアシン、葉酸はそれぞれが栄養素の代謝を補助する役割がある。
健康だけでなく、痩せたい、筋肉をつけたい、そんな思いがあるなら、ビタミンB群は摂って損はない栄養素です。欠乏しやすいビタミンBもあるので、食事から、もしくは手軽にサプリメントから、しっかりと摂る事でダイエットもトレーニングもより良いものになるでしょう。
動物の肝臓についてですが、非常に高い栄養価を誇っており、肝臓だけで全てのビタミンB群が補えてしまうほどです。しかし同時にコレステロールも多く含まれているため、栄養が豊富だからと言って食べ過ぎるのはよくありません。注意が必要です。
では、また。
参考文献
- Coates PM, Betz JM, Blackman MR, et al., eds. (2010). Encyclopedia of Dietary Supplements. Informa Healthcare. 2. 748-53.
- Institute of Medicine. (1998).Food and Nutrition Board. Dietary Reference Intakes: Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline. National Academy Press.
- National Institute of Health. Vitamin B1, Vitamin B2, Vitamin B3, Vitamin B5, Vitamin B6, Vitamin B7, VitaminB9, Vitamin B12. Retrieved from https://ods.od. nih.gov/factsheets/list-all/
- Ross AC, Caballero B, Cousins RJ, Tucker KL, Ziegler TR, eds.(2014). Modern Nutrition in Health and Disease. 11, 317-24.
- 生活学Navi 資料+成分表 2016 ISBN:978-4-407-33900-0