カゼインプロテインは通常のプロテインよりも体への吸収が遅く、就寝前に飲むと寝ている間にも筋合成が促される、と言われています。
しかし、これまで沢山の研究が行われている中で、効果が「ある」と「ない」で別れており、本当に飲む意味があるのかと感じている方も多いかもしれません。
今回発表された調査では、多少その不安を払拭してくれるかもしれません。
就寝前のカゼインプロテイン
カゼインプロテインを就寝前に飲むと、筋力トレーニングに反応して筋力・筋量共に向上するとの事。しかし今まで、この効果が合計のタンパク質摂取量が増えたことによるものか、単純に就寝前のプロテインシェイクが良いのかを調べた研究はありませんでした。
Frontiers in Nutritionで公表されたレビューによると、既存の研究成果は、夜間の睡眠は筋量増加にとって固有の栄養窓口であることを示しています。また、夜遅いタンパク質からのカロリー摂取は皮下脂肪を必然的に増やすものではない事も示唆しています。
カゼインポイント:Snijdersの重要な研究
「いくつかの研究では、青年による寝る前タンパク質摂取は、就寝中の筋タンパク合成の上昇に繋がる事を顕している。」と、マーストリヒト大学の助教授であり、代表著者のTim Snijders博士は言います。
「そのような研究が、定期的な筋力トレーニングをしている中で、就寝前のプロテインが筋力と筋量を最大限に高めてくれるというアイデアを扇動してきたのだ。」
この論に対して最も有力な実証をしたのがSnijders博士の2015年の研究です。
彼の研究チームは44人の健康な青年を12週間のトレーニングプログラムに参加させました。そのうち半分は30gのカゼインプロテインと15gの炭水化物を含んだプロテインシェイクを就寝前に飲み、他の半分はカロリーフリーのドリンクを飲み、実験を行いました。
トレーニングは効果的であり、どちらのグループでもスクワットの記録は伸び、大腿四頭筋にも成長が見られました。しかし、就寝前にプロテインを摂っていたグループでは、もう一つのグループと比べて、筋力と筋量がはるかに多く増加していました。
たんぱく質の消費は就寝前の方が良いのか?
しかし筋量・筋力増加は、就寝前にタンパク質を摂る事それ自体によって引き起こされているのか、タンパク質とカロリーの全体摂取量の増加によるものなのか、どちらなのでしょうか?
この質問に対しては、たった一つの研究しか成されていません。しかも、実験は不成功に終わりました。
研究は8週間にわたるクリーンバルキング(脂肪をつけずに筋肉を増やす増量方法)を、一般トレーニーに行わせ、夜にカゼインプロテインを飲ませるグループと、同じサプリメントを朝に飲ませるグループとに分けて実験されました。
結果は、前者のグループの方が0.8㎏多く筋量を増やす事になりました。統計的には著しい差異は見られず、参加者が26人と少ない事が原因だったと考えられます。
「私たちの研究に基づくと、就寝前のタンパク質と他の時間帯のタンパク質の摂取の違いを出すには非常に多くの実験参加者が必要になる事が予測される。」と、Snijders博士は説明します。
しかしながら、これまでの多数の研究によって、間接的に寝る前のプロテイン自体が、健康で若いトレーニーに良い影響を与えることを示唆しています。
睡眠は筋肉回復・成長の機会
そもそも、タンパク質を寝る前に摂る事は、一日のプロテイン摂取の分布を改善するために利用できるとSnijders博士は言います。
筋肉は、タンパク質からのアミノ酸という、正しい構成要素が血中にある時にしか成長・修復されません。しかし血糖値とは違い、アミノ酸は、血中循環濃度を一定に保つために体内に貯蓄されたり、放出されたりすることはありません。
「500人のアスリートについての調査では、彼らは平均的に1.2g/kgのタンパク質をメインの三食から消費しているのに、夜の間食にはたった7gしか摂取していない事が分かっている。結果的に、筋成長のためのアミノ酸のレベルは、夜の間低いままだったということだ。」
しかし、もし就寝前のタンパク質摂取が、夜中筋肉により多くのアミノ酸を吸収させるのだとしたら、昼の間はより少ないアミノ酸しか取り込んでいないのでしょうか?おそらく違う、とSnijders博士は主張しています。
「それぞれの食事におけるタンパク質の補給による筋合成効果はは付加的なもののようだ。私たちが見つけた一つの研究では、就寝前に十分な量のタンパク質(60gのホエイ)を摂取することは、翌朝の高たんぱくの朝食に何ら影響を及ぼさなかったことを示している。
「更に、他の研究では就寝時間のプロテインサプリメントの追加は翌朝の食欲にも変化をもたらさなかったと顕している。つまりタンパク質やカロリーの総摂取量を損なう可能性は低いという事だ。」
太らないし睡眠にも影響しない
寝る前のタンパク質に関してはまだ実験段階ではあるようですが、試すときに何か害はあるのでしょうか?何時間も動かない時間の前にカロリー摂取をするわけですから、心配なところもあります。
証拠は不十分ですが、希望があるものです。
「8週間にわたる朝vs夜のカゼインプロテインの研究では、タンパク質のカロリーの追加摂取は、運動量は変えなかったのに対して脂肪の量の増加には全く繋がらなかった。」と、Snijders博士は報告します。「しかし参加者の数が少ないため、このような結果は注意深く解釈するべきだ。」
「この研究を支援しているのは、11人の活発な若い男子に関する研究である。このグループに就寝前にカゼインプロテインを摂らせたところ、翌日の脂肪燃焼率が上昇したと報告されている。これは、カゼインの摂取が後に続く食事のインスリン反応を減らすことで、より多くの脂肪をエネルギーとして使用したためだろう。」
少なくともこれらの研究結果から言えば、就寝前のタンパク質摂取、特にカゼインタンパクは、『太らない』。更に言えば、脂肪の代謝を良くするようなのです。
最後に、就寝前のプロテインによって、睡眠が阻害されないか、に関してです。「寝る前のタンパク質の摂取は、入眠潜時(眠りにつくまでの時間)や睡眠の質に対して何の影響もない事が一貫して示されている。」
結果、就寝前にプロテインサプリメントを加える事に関して決定的な証拠はまだ無いにせよ、試す価値はあるという事です。また、更なる研究にも期待がもてるでしょう。
記事のまとめ
- 寝る前にプロテインを摂るのが事自体が有益かはまだわかっていない。
- 一日のタンパク質総摂取量を補うには良い。
- 血中のアミノ酸濃度を保ち、筋成長・修復する可能性がある。
- 寝る前のプロテイン摂取は太らないし、睡眠も妨げない。
参考文献
- Science daily. (2019). Bedtime protein for bigger gains? Here’s the scoop.
- Snijders, Tim. (2019).The Impact of Pre-sleep Protein Ingestion on the Skeletal Muscle Adaptive Response to Exercise in Humans: An Update.