卵は日常に欠かせない食品として日本だけでなく世界中で活躍しています。料理への汎用性も高く、かかるコストも低いため、手に取りやすいという事もあっての人気だと思います。
しかし、栄養価を調べてみると『完全色』と称されるほどに栄養豊富である事が分かります。この記事では、卵の栄養的価値とダイエットやトレーニングとの関係性を中心にわかりやすく解説していきます。
- 卵の健康への効能と体内での働き
- 筋トレやダイエットへのメリット
- 効果的な食べ方
卵の栄養とカロリー
ビタミンとミネラル
卵は主にタンパク質と脂質で構成されており、炭水化物はほとんど含まれていません。卵は一つ一つ大きさが違いますが、Mサイズの卵一個(52g)でタンパク質は6.4g、脂質は5.36g、炭水化物は0.16g、カロリーは79kcalです(参照:カロリーSlism)。
『完全食』と呼ばれる卵は、ビタミンC以外のビタミン・ミネラル等の栄養を網羅しています。
ビタミンは水溶性ビタミンのビタミンB群、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kを含んでおり、2個の卵を摂るだけで一日の栄養摂取目安の10%~30%を摂取できるのです。
ミネラルはリン、カルシウム、カリウム、ナトリウムを多く含んでおり、更に重要な微少栄養素である銅、鉄、マグネシウム、マンガン、セレン、亜鉛を全て持ち合わせています。
このような栄養を含んでいるのは大部分が黄身ですが、白身はビタミンB群の含有量が多く、タンパク質の多くも白身から摂る事ができます。そのため、白身と黄身の両方を摂取することで『完全食』の恩恵を受ける事ができるのです。
コリン
卵の黄身に多く含まれている栄養成分の一つであるレシチン。その中にはコリンと呼ばれる栄養素が含まれており、細胞の修復と成長に関わっている大切な栄養素です。他にも神経伝達や脳の発達、骨密度等様々な側面で機能をします。
卵は牛レバーに次いで二番目に多くコリンを多く含む食品です。
コリンには記憶力改善や中性脂肪のコントロール等の役割があり、アルツハイマー病や高血圧などの生活習慣病予防も期待されている栄養素です。
多様なタンパク質
卵には6~7gのタンパク質が含まれていますが、そのタンパク質の種類は550種類にも上り、そのうちのたった20種類しか人体の中で働くことが確認されていません。
逆に考えれば、卵のタンパク質にはまだまだ隠されている人体への効能がある可能性があります。
卵の人体への効能
コリンが生活習慣病やアルツハイマー病に効果がある可能性があると言われているように、他の栄養素の作用によって、抗がん作用や免疫強化などさまざまな効果が期待されています。
抗細菌作用
卵に含まれる鉄やアビジン(タンパク質の一種)によって腸内環境の整理が行われることで、消化・吸収のシステムが改善されることが報告されています。更には、人体にはいない細菌が卵には含まれており、それらの細菌がより強固な腸内の免疫系を形づくっている可能性も示されています。
抗酸化作用
抗酸化作用とは、体内の細胞の酸化を抑える働きで、老化防止や細胞活性を促進する重要な働きです。抗酸化作用をもたらす物質は抗酸化物質と呼ばれ、多くの食品の中に様々な形で存在し、それぞれに違った役割・特徴を持っています。
鶏卵には多くの抗酸化物質が含まれており、ビタミン、カロテン、ミネラル、そして卵白のタンパク質などが抗酸化物質にあたります。種類が豊富なため、それだけ多くの作用も期待できるという事です。
卵はダイエットにも効果的
栄養価に富んでいて、タンパク質も多量に存在する卵はダイエットにも適していると言えます。更に、先ほど述べたように卵に多く含まれるコリンは体内の中性脂肪量を調整する働きがあるため、余分な脂肪の貯蔵を妨げてくれます。
炭水化物の含有量も限りなく0に近いため、糖質制限を行っている方にも適していると言えます。
しかしながら、脂質の含有量は卵一個につき5~6gと比較的高く、そのためカロリーも必然的に一個80~90kcalと高い事が分かります。卵をダイエット食に取り入れる時には消費カロリー摂取カロリーのバランスを保てるようにしっかりと調整する必要があるでしょう。
筋トレには?
筋肉をつけたい人にとっては、卵はまさに完全食ならぬ『筋肉食』です。
筋肉をつけるためのタンパク質、体重を増やすためのカロリー、筋力や筋量に影響するビタミンB群や他のビタミン、筋力改善が見込まれる亜鉛、骨の強化に役立つカルシウム・マグネシウムなど、非常に多くの効果をたった一つの食品だけで摂取することができます。
更にいい事には、卵は安いのです。タンパク質だけを摂るなら安価なプロテインから摂ったほうが安いですが、栄養価・カロリーなどを総合してみた結果では、卵ほどコストパフォーマンスが良い食品は他にありません。
僕も体重を増やすために一日卵を1パック以上は消費するようにしていた時期があります。1パックはタンパク質が60~70g、カロリーは800~900kcalです。料理のバリエーションにも富んでおり飽きが来ないため、個人的にも本当に良い増量食だと思います。
不飽和脂肪酸の摂りすぎに注意
一つ注意点であるのが、卵に含まれる不飽和脂肪酸の割合です。不飽和脂肪酸は大きく分けてn-3系脂肪酸(オメガ3)とn-6系脂肪酸(オメガ6)がありますが、卵に含まれているほとんどの不飽和脂肪酸がオメガ6なのです。
一般にオメガ6とオメガ3の割合は4:1が良いとされているため、卵を多く摂っている場合は、摂取量に合わせたオメガ3が必要です。脂肪酸の偏りは動脈硬化や心臓疾患の原因にもなるため、摂取のバランスは大体で良いので守るようにした方が良いです。
脂肪酸に関して詳しくは『脂肪酸のトレーニング・ダイエットにおける重要性』をご覧になってください。
卵のコレステロール
「卵はコレステロールを多く含んでいるから、一日三個以上食べてはいけない」という話をよく耳にしますが、そもそもコレステロールを多く含んでいる≠血中コレステロール値が上がるという認識自体が間違っています。
卵にはリン脂質が多く含まれており、リン脂質は悪玉コレステロール(LDL)を減らす働きがあります。また、アーモンドやオリーブオイルに多く含まれるオレイン酸や、上で述べたオメガ3脂肪酸を摂取することでLDL値の下降や善玉コレステロール値(HDL)の上昇が見込めます。
LDLとHDLのバランスは大切ですが、卵を摂取しているからと言って容易にそのバランスが崩れることはありません。それよりも、普段から食べている食事習慣によってLDL値は増減します。日常的に色々なものを摂取しましょう。
卵を生で食べるか加熱するか
最後に、『生で卵を食べるか、加熱調理をするか』という問題について説明します。
生で食べる場合にデメリットとなるのは、卵白に含まれているアビジンという成分です。先ほど抗細菌作用があると紹介したアビジンは、卵黄に含まれるビオチンの吸収を阻害する働きがあります。ビオチンは肌や髪の生成に影響します。
また、生卵はタンパク質の吸収率が悪いという話もあります。卵に含まれるオボムコイド(ovomucoid)という物質がタンパク質の吸収率を約50%ほどまで落としてしまう事が判明しています。
逆に加熱調理した場合には、卵に含まれる不飽和脂肪酸やセレン、ビタミンA等が熱によって失われてしまう事が報告がされています。
また、80℃以上の高い温度で加熱した場合にはタンパク質も失われてしまう事が示されています。
調理するなら半熟卵か温泉卵
全体的な栄養のメリットを生かすことを考えると、半熟卵か温泉卵といった、加熱をし過ぎずに卵白には程よく熱が通った状態にするのが一番良いとされています。
両方とも黄身のの栄養を保ち、タンパク質の吸収効率も90%以上と高い値を保つことができるので、卵を食べるときは極力加熱調理を施した方が良いでしょう。
まとめ
卵の栄養について説明をしましたが、ご理解いただけたでしょうか。要点をまとめると…
- 卵はタンパク質やビタミン・ミネラルといった栄養豊富な食品である。
- 脂質(特にオメガ6)を多く含んでおり、カロリーが高いため、食事のバランスに注意が必要。
- ダイエットにも筋トレにも、全体的には非常に適した食材である。他の食事との兼ね合いが重要。
- 食べるときは加熱した方がタンパク質の吸収効率が良くなるため、加熱調理が薦められる。
卵は安価で手に入りやすく、食事にも取り入れやすいため、健康のためにもダイエットのためにも、また筋トレにも、どのような用途であれ一日に数個食べると良いでしょう。勿論普段の食事とのバランスを考えてください。
では、また。
参考文献
- Leemakers, T C., et al. (2017). Effects of choline on health across the life course: A systematic review. Nutr. Rev. 73. 500-522.
- Pelletier, X., et al. (1996). Influence of yolk, white or whole-egg on gastric emptying and on glycemic and hormonal responses. Ann. Nutr. Metab. 40, 109-115.
- Sophie, R Godbert., et al. (2019). The Golden Egg: Nutritional Value, Bioactivities, and Emerging Benefits for Human Health. Nutrients. 11(3), 684.
- Wiedeman, A M., et al. (2018). Dietary Choline Intake: Current State of Knowledge Across the Life Cycle. Nutrients. 10, 1513.