皆さん、ブロッコリーやキャベツといった、アブラナ科の野菜は食べていますか?

特にトレーニングをしている方やダイエットをしている方は、ブロッコリーが良い、という漠然とした考えがあるかもしれません。実際、ブロッコリーは筋肉を増やすのにも、脂肪を減らすのにも効果はあります。

ここでは、アブラナ科の野菜に含まれる、インドール3カルビノールと呼ばれる成分が重要なのです。

この記事のポイント
  • I3Cはアブラナ科の植物に見られる化学物質である
  • 日常の野菜から摂取できる
  • 健康促進効果やテストステロン増進効果が見込まれている

インドール3カルビノールとは?

キャベツは代表的なアブラナ科の野菜です。ビタミンC、タンパク質量も多く、I3Cお含んでいます。

インドール3カルビノール(I3C)は、グルコシノレート(glucosinolate)と呼ばれる辛味成分の一種のグルコブラシシン(glucobrassicin)というアブラナ科の野菜に含まれる化学物質から発見されます。

アブラナ科の野菜、と言ってピンとこない方もいるかもしれませんが、小松菜、白菜、ブロッコリーやカリフラワー、キャベツ、ケール等、日常的に食べている野菜が、実はアブラナの仲間であり、このI3Cを含んでいるのです。

インドール3カルビノールの健康効果

I3Cには様々な健康効果も期待されています。

インドール3カルビノールを対象とした研究は今日までに多く行われてきていますが、その中で、抗がん作用や抗酸化作用といった多様な効果が期待されています。

I3Cのサプリメントの投与の実験では、以下のような結果が出ています:

  • 抗がん作用…複数の研究によって、腫瘍形成を抑え、細胞増殖・成長に関係する遺伝子を調整することによってがんの治療を促進する可能性があります。
  • 線維筋痛症と呼ばれる、筋肉の痛みや疲れなどの症状を改善する作用がある事が報告されています。
  • 老化防止…I3Cは自己免疫システムを調整し、炎症・感染・病気から守る機能があります。動物の研究ではありますが、寿命を延ばす効果も見られています。

インドール3カルビノールとエストロゲン

筋肉、体づくり、女性的な体等にも影響する性ホルモンのエストロゲン。

I3Cの一番大きな効果としては、エストロゲンに働きかけ、間接的にテストステロンの分泌を促進する事です。

I3Cが体内で濃縮反応と呼ばれる過程で代謝されると、代謝産物であるジインドールメタン(DIM)が形成されます。

このジインドールメタンとI3Cとが、エストロゲン受容体に働きかけ、芳香族化(アロマティゼーション)の働きを妨げるのです。

芳香族化(アロマティゼーション)って?

聞きなれない言葉かもしれませんが、性ホルモンの分泌に関わる重要な作用です。

男性ホルモンであるテストステロンが、ある一定量がアロマターゼと呼ばれる酵素によって、血液中からエストロゲンに変換される作用の事を芳香族化と呼びます。

何でそんなことをするんだ?と思われるかもしれませんが、テストステロンの値が通常よりも高い場合にアロマターゼは働いて、体の恒常性を保とうとしてくれるのです。ホルモンバランスの乱れによる副作用から体を守ってくれているんですね。

テストステロンの乱れによる副作用について、詳しくは「テストステロンとは?男性ホルモンの生産と役割」で解説しています。

エストロゲンの増殖を抑える

Journal of Nutritionで発表されたある研究[1]においては、こう述べられています:

I3Cはエストロゲンの増殖停止とアポトーシスを引き起こし、エストロゲンの影響を良化させる。

つまり、I3Cはエストロゲンの増殖を抑えるだけでなく、エストロゲンを壊して、テストステロンの入り込むスペースを開けてくれる、という事です。

エストロゲンの代謝向上

別の研究では、7日間という短い期間、6-7mg/kgのI3Cの投与を行った実験で、エストロゲンの代謝が良くなり、尿を通してより排出されるようになったとの結果が出ています[2]。

更には、同じ摂取量で2か月間投与を続けた場合、化学保護効果が見られたとの事です。つまり、がん細胞の増殖も減らした、ということです。

エストロゲンの働きを弱める

I3Cの摂取は、エストロゲン分子をテストステロンを壊しにくい弱い分子へと変換する作用があります[3]。

CYPB1Bと呼ばれる芳香族化を調整するタンパク質のはたらきを抑え、関連する酵素となるCYP1A2の働きを改善する効果によって、エストロゲンの働きが弱められる可能性が、研究で示されています。

ジインドールメタンだけじゃダメなの?

ジインドールメタンだけじゃダメみたいです。

ジインドールメタン(DIM)がI3Cの代謝物質なら、それだけ摂れば良いインじゃないの?と思われるかもしれませんが、そうはいきません。理由としては:

・DIM以外にもIANやNi3C、ICZといった多くの大切な物質がI3Cによって消化過程に生成される。

・働きを最適化するためにも、複数の化学物質を同時に生成させた方が体の健康に有利である。

・DIMはそれ単体では効率的に細胞に運ばれないため、濃縮反応が行われる際に他の物質と一緒運ばれる事で初めて効果を発揮できる。

簡単にまとめると、DIM単体では上手く働けないから他の物質の力を借りよう!という事です。

まとめ

野菜は軽視されがちな存在ですが、少なくともこれでアブラナ科の植物だけは食べたくなったのではないでしょうか。
エストロゲンに関する効果だけではなく、他の健康効果も期待できます。
野菜は体に良い、という伝統的なオカン思考もあながち間違いではないのですね。
この記事の要点
  1. インドール3カルビノールはブロッコリーやキャベツといったアブラナ科の植物に含まれる化学物質
  2. 健康効果として抗がん作用、細胞の老化、炎症抑制等
  3. I3CとDIM(ジインドールメタン)の主要な働きとしてエストロゲンの働きを抑制し、テストステロン値を間接的に向上させる効果がある
  4. I3Cはホルモン以外にも多くの健康増進効果をサポートする働きを持つ。

参考文献

  1. Auborn, KJ., et al. (2003). Indole-3-carbinol is a negative regulator of estrogen. Journal of Nutrition. 
  2. Gupta, Mona., et al. (1998). Estrogenic and antiestrogenic activities of 16α- and 2-hydroxy metabolites of 17β-estradiol in MCF-7 and T47D human breast cancer cells. Science Direct.
  3. Michnovicz, JJ., et al. (1997). Changes in levels of urinary estrogen metabolites after oral indole-3-carbinol treatment in humans. Journal of National Cancer Institute.
  4. Oregon State University. Indole-3-Carbinol.