ヨーロッパ糖尿病研究協会(EASD)のバルセロナ年次会議で発表された新たな研究では、16週間のベジタリアン食は、体重・体組成・血糖値コントロールの改善に関わる腸内細菌を増やすのに効果的である事が示唆されています。
ベジタリアン食は体重・血糖値等に関わる腸内細菌を増やす
腸内における生物相は、体重管理やメタボリックシンドロームや第Ⅱ型糖尿病の発達などにおいて重要な役割を果たします。
今回行われた研究の目的は、16週間の短期的な植物性の食事による、体重過多の成人における腸内細菌の種類や体重・体組成・インスリン耐性に及ぼす影響を調べる事です。
147人の参加者は、低脂質のベジタリアン食と、通常の変わりない食事との二つのグループに割り振られ、16週間の間、その食事内容に沿って食事を行うと同時に、腸内細菌の構成と体組成、インスリン感受性の調査も行われました。
16週間の後に、ベジタリアン食のグループの体重は平均で5.8㎏減少し、特に脂肪密度(平均3.9㎏減)と内臓脂肪の低下が見られました。インスリン感受性もベジタリアン食のグループで大いに改善されました。
また、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)とバクテオイデス・フラギリス(Bacteoides fragilis)と呼ばれる、体重や脂肪密度、内臓脂肪の減少、インスリン感受性に関わる腸内細菌の数が増殖(それぞれ4.8%、19.5%増)しました。
腸内細菌の構成における主な変遷は、食物繊維摂取による大腸の腸内細菌(上記の細菌等)が生成する短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)の増加の影響によるものです。
食物繊維を多く含む食事によって腸内細菌の構成が改善され、酪酸等の、体重やインスリン感受性の改善効果が発見されている短鎖脂肪酸が生成される仕組みになっており、健康改善に第一に推奨される事は、食物繊維を摂取する事だと指摘されています。
短期的な低脂質ベジタリアン食は、体重・体組成・インスリン感受性の改善に関わる腸内細菌に効果的である事は示されましたが、ベジタリアン食そのものの影響と、摂取カロリーの減少による影響の分離が行われていないため、更なる研究が必用とされています。