筋肉をつけるためや、効果的なダイエットをするために1日に6回や7回食事をしている人は少なくないと思います。ボディビルディングを行なっている筆者自身も1日に最低5回ほど食事をしていますが、筋肉増強やダイエットに本当に食べる回数が重要なのか、と疑問に思われている方もいるのではないでしょうか。

食事の回数は筋肥大のためにも、ダイエットを最適化するためにも重要と言われています。

残念ながら食事回数と筋肉の関係を調べた研究は多くありますが、完全にこれが絶対的に正しいものだ!というものはまだ発表されていません

そのため、この記事では90年代頃から一般的に学術論文で主流とされている説に則って、筋肉増強・ダイエットにおける食事回数の大切なポイントを説明していきます。

  1. 血中のアミノ酸濃度を一定に保つために、3〜4時間に一回のタンパク質・アミノ酸摂取が大切
  2. 食事を一定の間隔で摂り、血糖値を一定に保つことで筋肉の分解を抑えることが大切
  3. 1日に必要な摂取カロリーを摂るために食事を複数回に分けて摂ることが大切
  4. ダイエット・減量中の人・女性は食べる回数を減らす方が良い?

1. 食事を一定の間隔で摂り、血糖値を一定に保つことで筋肉の分解を抑えることが大切

パンは血糖値を上昇させます。

間食に食事を摂って血糖値を一定に保つことは、筋肉を維持・増強することにもつながります。

blood_glucose_level

筋肉・ダイエットへの影響をまとめると、図のようになります。

血糖値が下がると筋肉の分解が進むと言うのがポイントです。

世の中の多くの人は朝・昼・夜の3回の食事と、おやつや間食などを加えて4~5回ほどの食事頻度で過ごしているでしょう。

おやつや間食は人によって食べるものは変わりますが、キャンディやスナック菓子、パンなど、糖質の多いものがメジャーだと思います。

糖質を多く含む食事を摂ると、血糖値が上昇し、脳や筋肉の細胞に糖が取り込まれて、エネルギーとして使われます。

つまり、糖質を含むお菓子やパンを間食・おやつに食べることは、足りない糖質を補って昼食や夕食まで頭を使ったり、体を動かすために行う理にかなった行動です。

血糖値とは、消化管から血中に放出されたグルコース(糖)がどれだけ血の中にあるかを指す値のことです。食後は、食事から取り込まれた糖質がグルコースなどの単糖と呼ばれる小さい形まで分解されて、血中に放出されます。そのため、食後は血糖値が上昇します。

上昇した血糖値を細胞に取り込むために働くのが、膵臓から分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンです。インスリンが糖質を含む血中の栄養素を体の細胞に取り込むことで、血糖値は下がります。

基本的に人間は、血中の糖をインスリンによって細胞に運ぶことによってエネルギーを作り、日々生きています。つまり、血中から細胞に運べる糖がなくなると、エネルギー源がなくなるのです。食事の数時間後に疲れてきたり、眠くなってきたりするのは、血糖値が下がってエネルギー源がなくなってしまうためです。

しかし、そのままの状態が続いたら人間はエネルギーが枯渇して死んでしまいますね。

そんな時に、体は脳や筋肉を働かせるために、グルカゴンやコルチゾールと呼ばれるホルモンを分泌して、体に蓄えらている糖を分解してエネルギーに変えろ!という信号を体の各部位に送ります。糖は肝臓・筋肉・脂肪に蓄えられています。

このグルカゴンやコルチゾールというホルモンは、血糖値を維持するために見境なくどこからでもエネルギーをとってこようとします。肝臓に蓄えられている糖は優先的に使われますが、それが無くなると今度は筋肉のタンパク質なども糖に変換して、血糖値を保とうとするのです。

前置きが長くなりましたが、筋たんぱく質が血糖値の維持に使われてしまうために、血糖値が低い状態になることは、筋肥大には悪いことになります。

悪いと言っても最適でないだけで、血糖値が低い状態が5〜6時間続いた程度では、ほとんど筋肉の分解はない可能性が高いです。肝臓や脂肪からのエネルギーもありますし、その前に食べた食事の消化に時間がかかっている場合は血糖値があまり下がっていないこともあります。

しかし、1回の影響は小さくても、それが毎日、毎週、毎月続いていけば、筋肉の成長に影響を与える可能性がでてきます。ですから、筋肉の肥大のチャンスを逃したくない!という人は、血糖値の維持は重要な要素になります。

ダイエットを行なっている人にとっても、できるだけ筋肉の分解する機会は作りたくないと思います。筋肉が減ると基礎代謝も減り、体が自然に消費してくれるエネルギーが減ります。つまり、体重が減りにくくなります。だからこそ、ダイエット中・減量中にも血糖値はあまり下げたくないことになります。

しかし、血糖値を低い状態にすると、蓄えられている脂肪を分解してエネルギーに変えることにつながる=脂肪が燃焼されるため、必ずしもダイエット中に血糖値を一定にするのが一番良いとも言えません。

ダイエットに関してはメリット・デメリットがあるということで理解してもらえれば良いと思います。

この記事で少しインスリンに触れましたが、インスリンに関してはこちらの記事でよりわかりやすく解説しているので、是非参考にしてみてください。

2. 血中のアミノ酸濃度を一定に保つために大切

肉、魚、卵、豆などの食品からタンパク質を摂取すると、人間の体はタンパク質をアミノ酸という小さい物質に変換し、体内で使うことができるようにしてくれます。筋肉は当然、内臓、皮膚、髪など体の多くの箇所はアミノ酸がタンパク質に再合成されて構成されています。

血糖値が血中の糖の濃度を表すのと同じ様に、アミノ酸も胃や小腸から吸収された後に血中に放出され、体中に運ばれていきます。もちろん、食後一定の時間が経つと、アミノ酸は内臓や筋肉などに運ばれ、血中のアミノ酸濃度は下がります。

アミノ酸は筋肉を作る大元ですから、アミノ酸濃度が下がる=筋肉を作る材料が供給できなくなるということになります(実際はもっと複雑な過程関係して筋肉の合成・分解は行われますが、この記事では省略します)。

アミノ酸濃度は食事の消化速度に直接関わるため、実際にはそこまで頻繁に食事をする必要はないでしょう。しかし、筋肉タンパク質の合成を最適化したいというトレーニーは、2~4時間に一回はタンパク質を豊富に含んだ食事orプロテインやアミノ酸などのサプリメントを摂取する必要があります。

同じことが、ダイエットや減量をしている方にも言えます。カロリー制限をしている場合は特に、筋肉が分解されやすい状態にあります。十分な糖質をとっていない上にタンパク質も摂取できていない、という状態は筋肉の分解を更に加速させるため、一番避けたいです。

筋肉をできるだけ増やしたい・保ちたいという場合には、1日に5~6回ほどのタンパク質の摂取を推奨します。

3. 1日の必要カロリーを摂取するために大切

インスリンは体の中では重要なホルモンです。

トレーニングをしている多くの方は、一般の方よりも1日の摂取カロリーは多くなる傾向にあります。

トレーニング自体もカロリーを消費しますが、それによって増えた筋肉は基礎代謝量をさらに多くし、1日のカロリー必要量も必然的に多くなります。

一般的な成人男性は2300~3000kcal/日、成人女性は1700~2200kcal/日のエネルギーが必要とされています。

が、より大きい筋肉がついた人であれば、1日に4000kcal、5000kcalと多くなるのは当然のことで、それを3回の食事で摂取するのは辛い、という人も少なくありません。

1回1500kcalの食事を3回摂るのと、750kcalの食事を6回摂るのとでは、同じ4500kcalでも1回の食事量も少なくて済む6回食の方が、消化がよく感じたり、精神的にも気が楽になったりと、1日の食事からの負担を軽減することができます。

だからといって、絶対に6食摂る必要はないです。自分が一番楽にカロリーを摂取できる回数や、食事のタイミングで栄養を知ることが大切で、それは人によって大きな違いあります。

4. ダイエット・減量中の人や女性は食事回数を減らす方が良い?

食事の頻度を上げる事は代謝に関係していると言われています。

その反面、ダイエットを行っている方や、女性の方は回数を多くするよりも回数を少なくする方が良いケースもあります。

女性は一般的に男性よりも基礎代謝が低く、筋肉も大きくなりにくいため、例えトレーニングを行なっていても1日のエネルギー必要量は一般の方に比べてもそこまで大きな差はありません。そのため、1日に必要なカロリーを摂取することに関して言えば、3回の食事でも問題ないと言えます。

また、ダイエットをしている方は、性別に関係なく低い摂取カロリーで1日を過ごすことになると思います。

ダイエットや減量をしているときは、とにかく空腹との戦いであり、どれだけ空腹を紛らわすかも精神的ストレスを減らすために大切です。

そういった空腹の状態では、少量の食事を5回・6回に分けて摂るよりも、量の多い食事を2回・3回に分けてる方が1回の食事の満足感が得られるため、精神衛生上良いこともあります。

最近ではインターミテント・ファスティング(intermittent fasting)といって、食事回数は1・2回で、1日の大部分を絶食状態(ファスティング)で過ごすライフスタイルが流行になっています。摂取カロリーが同じ場合では、intermittent fastingを行った人たちと普通の食事を行った人たちの体重減少に差はないとの研究も公表されています。

もちろん、人によっては1回に多く食べるよりも複数回に分ける方がダイエットを続けやすいという方もいるため、個人の捉え方によっても変わります。

このように、食事制限を行っている場合や、性別によっては、1日の摂取カロリーが少ないくても済むため、一概に食事回数が多いとは言えないのです。

まとめ

今回は食事回数に関して話しましたが、理解していただけたでしょうか。要点をまとめると…

  • 食事回数を増やすことで血糖値を保ち、筋肉の分解を防ぐことができる
  • 食事回数を増やすことで血中のアミノ酸濃度を一定に保ち、筋肉の合成を促進する
  • 食事回数を増やすことで1日の必要カロリーを摂取するための精神的負担を減らす
  • 食事回数を減らすことでダイエット中の空腹やストレスに対処する(個人差あり)

1日6回の食事という固定概念がフィットネスコミュニティーにあると思いますが、その回数の裏にどのような目的があるかを理解することで、自分の目的に合わせてより柔軟な食事方法で生活できようになります。

タンパク質の摂取は複数回に分けることが良いとされていますが、インターミテントファスティングの例のように、絶対に食事を分けなければいけないとも思いません。

自分が何を目指しているのかを明確にして、最も続けやすいと思う食事のスタイルを確立していくと良いでしょう。