トレーニングをしている方やアスリートの方に人気な、BCAAについて。BCAAを摂ることで、「筋肉の分解が抑えられる」「筋肉痛の治りが速くなる」「筋肉が増える」などなど、メリットが沢山!…と言われています。今回は、筋トレをしている方なら気になるところの、筋肉の合成に本当に関与しているのか、という点を見ていきたいと思います。

そもそもBCAAとは?

BCAAとは、Branched Chain Amino Acidの略称で、日本語では分岐鎖アミノ酸と言われます。アミノ酸はタンパク質の構成成分ですが、その中でも必須アミノ酸と呼ばれる体内で生成できないアミノ酸が9種類あります。

BCAAは9種類の内の、ロイシン、イソロイシン、バリンの3つから構成されており、いずれも筋肉中に多く含まれているため、筋合成などに有用だと言われているものです。

期待されている効用

BCAAの効用としてメジャーに認知されているものは、筋合成の促進やトレーニング、運動後の筋疲労及び筋肉痛の回復促進運動パフォーマンスの向上といったものです。

BCAAはホエイプロテインなどとは違い、余計な炭水化物や脂質、他のマクロな栄養素が含まれていません。そのため、ホエイプロテイン以上に体に速く吸収され、エネルギー源として働くことも期待されています。

本来運動で使用されるエネルギー源の糖の使用が抑制されることで、乳酸の生成も抑制され、結果的に運動パフォーマンスが良くなるようです。乳酸があまり出ないために、後日の筋肉痛も抑えられるという事になります。

また、吸収が速いため、トレーニング直前とトレーニング中に筋肉の合成促進・分解抑制も行われることが予測されています。トレーニング中にも体にストレスがかかることにより、筋肉の分解は行われていますが、筋合成を促進させることによって分解させないようにしよう、ということです。

BCAAと筋肉の合成との関係性

筋力を増やす可能性が示唆されていますが、実際はどうなのでしょうか

トレーニングをして筋肉をつけようとしている方は本当にBCAAが筋肉の合成にかかわっているのか気になると思います。実際にBCAAと筋肉の合成に関する研究は多くあります。

2004年に行われた研究では、運動によって筋肉内のBCAAの分解が促進され、BCAAの需要量が高まることが分かりました。それにより、サプリメントから摂取されたBCAAが筋肉の合成を高めるため、BCAAはスポーツや運動に効果的だと結論付けています[1]。

2011年の研究では、BCAAサプリメントの摂取による、血中の遊離アミノ酸、ブドウ糖、遊離脂肪酸、尿素窒素の濃度の変化を調べています。結果として、インスリンのレベルと、遊離脂肪酸の血中濃度が上がり、ブドウ糖と尿素窒素の濃度に変化はありませんでした[2]。

*尿素窒素は肝臓や腎臓の値に関連する単位量

研究内で直接筋合成への指摘はありませんが、インスリンのレベルが上がった事で筋肉の合成に関与していることはわかりますね。

2001年に公表された研究結果によると、BCAAの一つであるロイシンはmRNAの変換に関係するタンパク質合成を活発にさせる信号(シグナル)を出す事が分かっています[3]

*mRNAというのはmesssanger RNAの略称で、個人の遺伝情報に従ってタンパク質を合成する、伝令リボ核酸と呼ばれる分子です。

このように、様々な観点からBCAAとタンパク質の合成の関係性について研究がなされてきているため、関連性は確実にあると言っても良いと考えられます。

必須アミノ酸は全て必要

必須アミノ酸

しかし、[3]の実験で言及されているように、BCAAはタンパク合成の単なるシグナルであって、タンパク合成そのものにはなり得ない可能性があります。


上述した必須アミノ酸というのうは、9種類全てが体内で揃っている状態でなければいけません。そのため、残りの6種類はところ別に摂取する必要があるわけです。一つの基準として、「アミノ酸スコア」というものがあります。

タンパク質合成のために理想的必須アミノ酸組成をアミノ酸評価パターン(必須アミノ酸必要量パターン)として設定し、それぞれの食品に含まれている必須アミノ酸量がその何%にあたるかを算出する方法である。

生活学Naviより

つまり、評価パターンに満たない必須アミノ酸が一つでもあると、その一番低い必須アミノ酸値に見合う量でしかタンパク質合成が成されない、という事です。そうなると、BCAAだけを飲んでも筋合成に関しては意味がないことになってしまいます。

実は、[2]の実験で、インスリンレベルは上がっていたのですが、芳香族アミノ酸の血中濃度は下がっていたことが分かっているのです。

*芳香族アミノ酸…フェニルアラニン(必須アミノ酸)とチロシン(非必須アミノ酸)から成るアミノ酸族

BCAAを摂取する場合には、他のアミノ酸の重要性を忘れないようにしなければ、タンパク質合成が行われないばかりか、血中のアミノ酸量が減少してしまう可能性もあるという事を覚えていた方が良いと思います。

まとめ

今回はBCAAと筋合成に関して話をしましたが、理解していただけたでしょうか。要点をまとめると…

  1. BCAAは必須アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリンから構成されている
  2. 筋合成促進、筋分解抑制、運動パフォーマンス向上、筋肉痛回復、エネルギー源として利用等の効用が期待される
  3. 筋合成との関連性があるが、合成そのものは行われないので他の必須アミノ酸も摂取しなければならない。

BCAAを飲む際は、その前にアミノ酸スコアが高い卵白や牛乳(カゼイン)などの食事を摂るか、プロテインを飲むとタンパク質合成の効果が高くなると思います。僕としては吸収の速いホエイプロテインを摂る事をおススメします。

BCAAの適切な摂り方を心得て、体内の筋合成を最大限に利用しましょう。

では、また。

参考文献

  1. Exercise Promotes BCAA Catabolism: Effects of BCAA Supplementation on Skeletal Muscle during Exercise. The Journal of Nutrition. Retrieved from https://academic.oup. com/jn/article/134/6/1583S/4688850
  2. Effects of Branched-Chain Amino Acid Supplementation on Plasma Concentrations of Free Amino Acids, Insulin, and Energy Substrates in Young Men. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. https://www.jstage. jst.go.jp/article/jnsv/57/1/57_1_114/_article/-char/ja/
  3. Signaling Pathways Involved in Translational Control of Protein Synthesis in Skeletal Muscle by Leucine. The Journal of Nutrition.