炭水化物は体を動かし、脳の働きを活発にするためにも必要な重要な栄養素です。しかし、同時に炭水化物は摂りすぎると脂肪として貯蓄されやすいため、ある程度の目安や基礎知識を知っておくのが良いと思います。
今回はトレーニングによって筋肉を増やす上でどの位炭水化物を摂るべきかを見ていきたいと思います。
一般的な一日の炭水化物摂取量の目安
厚生労働省により公表された食事摂取基準(2015年)によると、老若男女問わず、
・タンパク質=13~20%
・脂質=20~30%
・炭水化物=50~60%
この割合での栄養摂取が推奨されています。炭水化物は半分以上の割合で摂るべきだと言われていますね。これはg換算するとどの位なのかというと、
平均男性の場合:2300kcal/日×50%=1150
1150÷炭水化物4kcal/g=287.5g
平均女性の場合:1650kcal/日×50%=825
825÷4kcal/g=206.25g
一日の消費カロリーや運動強度にもよって変わりますが、最低でも男性で250g、女性で200g程度が進められています。
スポーツ選手のトレーニングに必要な摂取量
トレーニングにもスポーツによって様々な種類があり、それぞれの競技にあった栄養の摂取の方法があると思います。今回の目的である筋肉をつけるための炭水化物量にも諸説があり、よりタンパク質を重視するべきだとしている方もあれば、炭水化物を多くとって常に筋肉にエネルギーを充填させておくべきだという意見もあります。
例えば、2000年にAmerican Dietetic Association等によって公表された研究では、炭水化物は、運動中の血糖値のコントロールや筋肉内のグルコース(ブドウ糖)の保持のために重要であるため、アスリートは体重1㎏につき炭水化物を6~10gほど摂るように推奨しています[1]。
70㎏の成人男性であれば420~700gもの炭水化物を摂る事になります。ものすごく多く感じてしまいますね。本当にこんなに必要なのか?と疑問になるでしょう。
勿論、同研究では運動の種類や強度、環境や状況に合わせて変えるべきだと言及しています。重きを置いているのはやはり炭水化物の多量摂取です。
ボディビルダーにみる筋肉をつけるための摂取量
筋肉をつけることにおいてプロであるボディビルダーの炭水化物摂取量はどうなのでしょうか。今回は日本オープンボディビル大会9連覇中の鈴木雅選手の食事内容を参考に見てみましょう。
鈴木雅選手の食事・サプリメント摂取
8:00 起床後グルタミン10g摂取
10:30 トレーニング前、中、後にアミノペプチド、アルギニン、グルタミン
クレアチン等のサプリメント
13:30 ベーグル2個、ホエイプロテイン60g、ビタミンミネラルサプリメント
16:30 玄米or白米500g、鶏胸肉(皮なし)250g、ナッツ20粒、ビタミンミ
ネラルサプリメント
21:00 ホエイプロテイン60g
23:00 ホエイプロテイン60g
25:30 玄米or白米500g、牛肉300g、グレープフルーツ1個、ビタミンミネラ
ルサプリメント
と、こんな感じです。改めてみると恐ろしく徹底された食事管理でほれぼれしますね。おおよそでPFCの量を計算してみると…
たんぱく質:約270~280g
脂質:約30~40g
炭水化物(糖質):約450~470g
*ホエイプロテイン中にタンパク質が8割含有を推測
*牛肉は脂質の少ない部位を推測
鈴木選手の体重は増量期と減量期で2、3㎏しか変わらないようなので、体重85㎏だと考えると、炭水化物は体重の5倍~5.5倍ほど摂取しているようです。更に全体のカロリーが3150~3360kcalになり、炭水化物の割合は全体の約6割となります(彼の若かりし頃はもっと炭水化物を中心にした食事だったそうです)。
他のボディビルダーの方々も最低限のタンパク質(体重の2~3倍g)と、脂質を控えめに、炭水化物を多めに摂るという方が多いようです。その理由の一つとしては、ボディビルディングにおける筋力トレーニングというのは、基本的に短時間に最大筋力を発揮して筋肉の発達を促す、というスポーツだからです。
脂質に関する記事を書いた時も言ったとおり、脂質が持久・耐久トレーニングでのエネルギー供給役を担っている反面、炭水化物は主に短期間でのエネルギー発揮を助けるブドウ糖を供給してくれるため、筋力トレーニングで良いパフォーマンスを発揮するにはどうしても炭水化物が必要になってくるのです。
日本人の農耕民族としての特性も?
日本人は元々弥生時代から中国から伝来した稲作を主に、炭水化物・野菜によって育ち、成り立ってきた民族で、炭水化物を吸収しやすいように体の仕組みを作られています。
欧州の民族は狩りを中心に肉食文化を発展し、タンパク質の吸収を効率よくできるように遺伝として伝わってきたのです。ですから、炭水化物を多く摂ってエネルギーが発揮できるのは実は日本人が古来から受け継いでいる遺伝であり、才能である可能性があります。
タンパク質ばかり摂っているだけでは筋肉は育たず、炭水化物を適量摂取してこそ筋肉がつくというのは万人に共通する事だと考えられますが、炭水化物からのエネルギー供給効率に関しては日本人が非常に優れているかも知れません。
まとめ
今回は筋肉をつけるための炭水化物の量に触れましたが、ご理解いただけたでしょうか。要点をまとめると…
- 炭水化物の摂取量に関しては諸説ある(280~700g)
- 炭水化物は運動強度・環境によって摂る量を調節する
- 日本人は炭水化物のエネルギー変換効率が優れている可能性がある。
結局のところ、「これだ!」という答えは明確に定めることはできないので、自分の日のカロリー消費量・摂取量と相談して、適切に取り入れていくのが良いのだと思います。
僕としては他のボディビルダーの方の食事を参考に色々と試してみるのがおすすめです。そうすることで、自分の体により馴染む食事管理の「枠」というのが形成されていくからです。
とにかく試行錯誤してみましょう!では、また。
参考文献
- Gold’s GYMania GGP Official Home Page Retrieved from http:// www.ggmania.jp/athlete_suzuki.html
- 生活学Navi 資料+成分表 2016 ISBN: 978-4-407-33900-0