研究者らは、ライ麦の中のタンパク質を発見する方法を開発し、グルテンフリー製品の製造者に対する貢献が成されたことがAmerican Chemical Societyにて公表されました。

ライ麦のタンパク質発見方法の確立とセリアック病

ライ麦・グルテン

グルテンフリー食がここ数年で体重減少や健康改善に良いとされて流行のようになっていますが、グルテンを避ける事はセリアック病の患者にとっては選択的な事ではなく、マストな事です。

セリアック病とは、小麦やライ麦の等に含まれるグルテンと呼ばれる麦タンパクの集合体に体が免疫反応を起こす自己免疫疾患のことで、セリアック病財団によれば、世界人口の約1%ほどが罹患している病気です。

免疫反応が引き起こされると、小腸の損傷や様々な胃腸系の症状に繋がります。

グルテンフリーのラベルを貼った商品は昨今多くありますが、セリアック病の人々へ害を及ぼす可能性がある微量の穀物が含まれている可能性があります。

研究者らは、まだ研究が十分に成されていないライ麦に焦点を当て、麦中に特定的に含まれるグルテンタンパク質を発見する質量分析法ベースのアプローチを確立しました。

質量分析法とは、分子を高電圧などでイオン化し、更にイオンを質量比で分離させて検出することで質量の分析を行う方法で、物質の分類や構造決定に有用な方法である事が提唱されています。

この方法を基に確立するために、研究者らは異なる12国から20種類のライ麦を集め、選択的にグルテンタンパク質を抽出しました。

研究チームは質量分析法を、それぞれのサンプルからペプチドの発見と定量化を行うために用い、それによりライ麦固有の6種類のタンパクペプチドを発見しました。

その後に、研究者らは商用粉末(小麦粉、メリケン粉等)とシリアル、スナックフードを解析し、ライ麦が含まれている製品の全てに今回発見されたライ麦のタンパクペプチドが含まれている事を発見しました。

更に、スペルトと呼ばれる小麦関連の穀物から生成された粉末では、2%程度のライが混入しており、とあるグルテンフリーを謳ったシリアルには、成分表示が成されていない微量のライ麦が発見されました。

このライ麦に特化したペプチドマーカーは、グルテン含有穀物を探知するのに有用となることが主張されています。

参考文献

  • Pasquali, Daniel., et al. (2019). Catcher of the Rye: Detection of Rye, a Gluten-Containing Grain, by LC–MS/MS. Journal of Proteome Research. DOI: 10.1021/acs.jproteome.9b00314