腱鞘炎や関節炎などの痛みがある時に普段のなど腕・足のトレーニングができない時には、血流を制限して行う血流制限トレーニングが有効です。弾力性のあるバンドやサポーターなどを肩と腕の関節部や足の付け根に装着し、血流を制限して行う事で、筋肉のパンプアップを向上させるトレーニング方法です。

ものしりくまさんものしりくまさん

最近三頭筋のトレーニングで肘を傷めて、腕の筋トレがまともにできないんだよね…。

多くの人が経験するであろうトレーニングでの「肘の痛み」や「関節・腱の痛み」は、非常に一般的な怪我です。

痛めてしまったから安静に休んでいるだけでは、筋肉の成長が止まってしまうだけでなく、関節や腱の弱体化にも繋がり、一度回復しても痛みが再発するケースは多くあります

今回はそんな痛みがあるときにも筋肥大を欠かしたくない人に最適な、「血流制限トレーニング」を、できるだけわかりやすく紹介します。

血流制限トレーニングの要点
  1. バンドやサポーターなど、血流を制限できるものを縛り付けることで、筋肉のパンプアップを促すことができる。
  2. 軽い重量で非常に強いパンプアップが得られるため、重い重量を扱う必要が無い(関節への負担が少ない)。
  3. 特に高価な器具・装備は必要なく、安全にトレーニングを行う事ができる。

関節・腱に優しい血流制限トレーニング

血流制限トレーニングは、その名前の通り、動かしている筋肉への血流を少なくしてトレーニングを行う方法です。

このトレーニングの場合、動脈流を制限は行われず、静脈流の制限のみが行われるため、血は筋肉へと運ばれてきますが、その血は体へ戻っていく事が出来ないのです。

バンドやサポーターで脚や腕を縛ることで、入ってくる血を閉じ込めてしまおう!という方法です。

血流制限トレーニングのメリット

血流制限トレーニングのメリットは主に3つほどあります:

  1. より強く長い間パンプアップを感じる事ができる。
  2. 扱う重量は軽いため、関節や腱に優しい。
  3. 筋肥大に関しては、通常の高負荷トレーニングと同じくらい効果的である。

筋肉の張り(パンプアップ)が良くなる

血流制限トレーニングのメリット一つとしては、血流を制限することで、筋肉の張りが良くなり、より強いパンプアップが得られる事です。

トレーニングを行う事で血は鍛えている筋肉部位に集中し、結果的にパンプアップと呼ばれる筋肉が膨らんでいるように感じる現象が起こります。

通常のトレーニングであれば、血流は常に体を循環するものであるため筋肉に留まる時間は少ないですが、血流制限トレーニングでは血が筋肉部位から逃げる事ができないため、血が鍛えている筋肉に集中することで、より強く長い時間パンプアップの感覚を覚える事ができるのです。

軽い重量で行うため、関節・腱への負担が少ない

血流制限トレーニングでは、重い重量は扱いません。

その理由としては、筋肉への血液の循環が制限され、酸素の供給も制限されることで、代謝物質の分泌が促進されるためです。

代謝物質の分泌によって、筋肉疲労の原因となる乳酸が非常に溜まりやすくなるため、例え軽い重量でトレーニングを行ったとしても、筋肉への代謝ストレス(代謝物質の分泌・代謝信号の伝達)が増加することで筋肥大を狙う事ができます。

このため、腱鞘炎や関節炎などの症状が見られる時であっても、扱う重量が普段より軽いため関節や腱に負担をかけずにトレーニングを行う事ができます

高負荷トレーニングと同じくらい筋肥大に効果的

代謝ストレスの増加によって、乳酸や無機リン酸、水素イオンなどの筋肥大反応を引き起こす物質の生成も促進されることで、筋肥大が行われます。

実際の所、非常に多くの研究によって血流制限トレーニングの有用性が示されていますが、その中には、被験者が少ない・研究期間が短い等の理由から、有意義でないとみなされる研究もあります。

そこで、2017年に公表されたメタアナリシス研究では、700以上の血流制限トレーニングから13の研究を選りすぐり、その効果を再度レビューすることで、高負荷トレーニング(従来のトレーニング方法)と血流制限トレーニングの比較を行っています。

結果として、血流制限トレーニングは高負荷トレーニングと同じ程度の筋肥大の効果がある事が示されました

この研究が全てではありませんが、多くの研究結果から導き出されている結論として、少なくとも筋肥大の効果を保ちつつ、関節・腱への負荷を減らすことができるこの方法は、非常に効果的で安全性も高いトレーニング方法であると言えます。

血流制限トレーニングの行い方

血流をコントロールしよう

血流制限トレーニングを行うときのポイント二つ:

  1. バンドやサポーターなどを腕や足に縛り付ける時にきつく縛り過ぎないようにする
  2. いつもよりも軽い重量でトレーニングを行う

バンドやサポーターなどで関節部を縛る

血流制限トレーニングには、特別な器具や装備は必要ありません。

  • 腕の血流制限→腕と肩を繋ぐ関節部辺り
  • 脚の血流制限→足と胴体を繋ぐ股関節部辺り

のように、関節部周辺を中心に縛る事で、筋肉への直接的な不快感を避ける事できます。

腕や足に装着して血流を制限することができるものであれば、バンドでもサポーターでも、薄い布やタオルでも何でもOKです

ポイントとしては、きつく縛り過ぎない事です。きつく縛りつける事で、血が送られてくるはず動脈の血流まで制限してしまい、全くトレーニングで力が発揮できない状態になってしまい、トレーニングボリュームの低下へと繋がってしまいます

最初の内はどの程度に縛れば良いのかが分からないかもしれませんが、感覚が慣れてくると、自分にとってどの程度が良いのかが理解できてきます。定期的に行う事で慣れる事が大事です。

いつもより重量は落としてトレーニング行う

血流制限トレーニングでは、扱う重量を犠牲に、より強烈な筋肉の張り・パンプアップに焦点を絞って筋肥大を狙う方法です。

特に関節や腱に負担をかけたくない人にとっては、リハビリ期間にも筋肥大を続けて行いたいという想いに確実に応えてくれる方法でしょう。

しかし、血流が制限され、筋疲労がたまりやすくなっている筋肉では、重い重量を扱う事は難しいため、筋肥大には向いていても、筋力強化に向いていないトレーニングです。

目安としては、最初は1セットに20回から30回程度の回数で行う事のできる軽い重量を選びましょう。

セットを組むときのポイントとしては、代謝ストレス上昇させ、血の流入を増やしスために、セット間の休憩を30秒程度の短い時間にする事です。

3セット、4セットとこなすうちに、最初は楽だった重量でも、最後のセットには8回も上げる事は出来なくなっているでしょう。

まとめ

血流制限トレーニングのまとめ
  1. バンドやサポーターなどで筋肉の血流の循環を制限し、パンプ感を強くすることで効果的に筋肥大できる。
  2. 扱う重量は軽いため、関節や腱への負荷も少なくて済む。
  3. 特別な装備は必要ないが、きつく縛り過ぎるとトレーニングに支障を来す可能性があるため注意。

肘が炎症起こしていて痛い、という人や膝の関節を傷めている・怪我をしているという人には確実に薦めたいトレーニング方法の一つです。是非試してみて下さい。

参考文献

  • Lixandrão, Manoel E., et al. (2017). Magnitude of Muscle Strength and Mass Adaptations Between High-Load Resistance Training Versus Low-Load Resistance Training Associated with Blood-Flow Restriction: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. DOI: 10.1007/s40279-017-0795-y