上腕三頭筋のトレーニングを頑張っているのに太くならない…そんな方は沢山いることと思います。しかし、ただがむしゃらに頑張るだけでは筋肉は大きくなりません。
本当に筋肉の発達を最大限に引き出すには、いくつか理解しておかなければならない事があります。一つ一つ見ていきましょう。
上腕三頭筋を太くする6つのトレーニングポイント
1.漸進性過負荷(プログレッシブオーバーロード)
筋肉を成長させるには、以前よりもより大きなストレスをかけ、体をそのストレスに適応させる必要があります。
その方法の一つとしてボリューム(レップ数、セット数、種目数)を増やすことが挙げられます。しかし、数を増やすだけ増やして重量を変えないのでは意味がありません。
筋肉の成長に必要なのは、より重い重量をより多い回数行う事です。それが筋肥大における、漸進性過負荷(数と重量を増やしていく)の原則です。更に、より大きなムーブメントで行う事で、非常に多くの筋肉組織へ負荷をかける事ができるのです。
大きな筋肉を持っているボディビルダーたちのトレーニングを見れば、恐ろしい重量を回数こなしている事がわかると思います。僕は小さい三頭筋で150㎏のクローズドグリップをしているボディビルダーは見たことがありません。
最初のステップとして、漸進性過負荷の原則に当てはまる種目を見つける事が必要です。肘への負担が少なく、フルレンジで行う事の出来る種目であるのと同時に、最大重量を上げていくことのできる種目を選ぶ必要があります。
その場合、プッシュダウンやキックバックよりも、クローズドグリップorリバースグリップのベンチプレス、ディップス等の方がより重量の天井が高い事が分かりますね。
プレス種目やディップスを軸にトレーニングの種目を考えていくと良いでしょう。もし次の6ヶ月の間に、クローズドグリップベンチプレスの重量とレップ数が100㎏×8回から120㎏×8回に上がっていたなら、確実に筋肉に成長が見られるでしょう。
2.マインドマッスルコネクション
マインドマッスルコネクションは、ボディビルダーの間でよく話されていた「噂」程度ので、軽視されがちなものでした。
しかし、現在では多くの研究が筋肉の動きを感じる事は重要であると説明しています。鍛えようとしている筋肉部位を単純に意識することは、筋肉活性を増やす可能性があるのです。
重量もこの役割の一端となっている事が示されています。重量が重すぎると、強固なマインドマッスルコネクションを作れなくなってしまいます。そうなると、ただ重りを動かしているだけになり、他の筋肉群が重りを上げるのに働いて目的の筋肉の活性が失われることに繋がります。
強度の観点から言うと、最大筋力の60~80%(8~15レップ)のレンジが、最も効果的に強固なマインドマッスルコネクションを作る事が示されています。そのレンジは筋成長にも理想的だという意見がありますが、これに関してはトレーニーと種目にもよります。
もしマインドマッスルコネクションの形成が上手くいかないのなら、トレーニングの最初にレンジの小さい種目から始め、アイソメトリックス(収縮点でホールドする)を利用して、血流が対象の筋肉に促されるようにすると良いでしょう。
上腕三頭筋の場合はプッシュダウン、もしくはリバースグリップのプッシュダウンを行うのが効果的です。下げ切った収縮点で2、3秒ホールドをすると2・3セット目にはかなり三頭筋を意識できるほどにパンプアップしてくるでしょう。
3.トレーニング頻度
より良い遺伝子の発現と、筋肥大に関連するホルモン生成を保つためにも、二週間に一回ほどそれぞれの筋肉を鍛えた方が良いでしょう。一週間に一回の場合より二回の場合の方が筋成長は上昇しますが、一週間に三回の場合は逆に筋肉の減少が起こる事が報告されています。
また、上腕三頭筋は全てのプレス種目(ベンチプレスやショルダープレス等)に使われます。そのため、胸や肩を同じ週に鍛えるなら、三頭筋も同時に刺激されるのです。
弱点部位を優先して鍛えたい時は、他の筋肉群のトレーニングボリュームを減らす方が良いです。エネルギーと栄養を弱点部位に回すためにも、他の部位はセットや種目を減らすか休みにし、対象の部位を集中的に鍛えるようにしましょう。
4.トレーニングの順番
弱点部位はトレーニングの始めに鍛え、週の始めの方に鍛えるようにしましょう。
一般的には、筋トレの始めに鍛えた筋肉は、後の方に鍛えた部位よりも少々成長が大きいのです。エネルギーが満タンの状態で集中力も高いため、より筋力も発揮しやすいためです。ですから、クローズグリップベンチプレスなどの漸進性過負荷を用いやすい種目を週の始め、そしてトレーニングの始めに優先して行うようにしましょう。
クローズドグリップベンチプレスやディップス等の、重量を増やしやすい種目は胸と肩もかなり使います。三頭筋を優先しているため、胸・肩を刺激しすぎないように注意が必要です。
5.メタボリックストレスとテンション
基礎的なコンパウンド種目において筋力を増やしていくのが基本になりますが、代謝的ストレス(メタボリックストレス)を増やし筋成長を促すハイレップの種目を行う事も大切です。時には最大限まで力を使い果たすことも、代謝物質の増加にとって重要です。
更に、三頭筋全体の発達には、それぞれの部位にストレスをかけるのが必要です。三頭筋は大きく分けて三つの繊維群を持っています。
- 長頭(Long Head)
- 外側頭(Lateral Head)
- 短頭(Medial Head)
一つ一つの部位をアイソレートしてトレーニングすることはできませんが、種目とやり方によっては、他の部位よりもより多くのストレスとテンションをかける事ができます。
長頭は三頭筋の中でも大きな負荷に耐える事の出来る部位で、オーバーヘッドエクステンション(下図)やプルオーバーなどの、肩関節が大きく屈折し、最大限に三頭筋が伸展される動きを含む種目で刺激されます。
長頭が肩関節をまたいで繋がっているのに対して、外側頭と短頭はそうでないため、アイソレートして鍛えるのは更に難しいです。
ですから、長頭へのテンションを低く抑えられる種目を選ぶ必要があります。例えばプッシュダウンやディップス等の種目は肩関節の関与が比較的少ないため、外側頭や短頭を刺激するのに適しています。
6.ジャイアントセットやスーパーセットで筋肥大
スーパーセットやジャイアントセット等の、複数の種目を続けて行うトレーニングは、トレーニング強度が高くメタボリックストレスの促進にも良い方法です。
例えば、ライイングエクステンションの場合でも、スカルクラッシャーのように額まで下す動きを10回、頭の後ろまで下す動きを10回することでスーパーセットになります。同じ種目でも、バリエーションを変える事でストレスを変える事になり、効果的なトレーニングを行う事ができます。
また、このような種目の組み合わせを考えるときは、部位を変えながら刺激するのも効果的です。プッシュダウンを最初に行った場合は、今度は長頭を狙うためにオーバーヘッドエクステンションを行い、次にディップスで外側頭・短頭を刺激し、最後にまたダンベルフレンチプレス等の長頭刺激種目を持ってくる、といったように、
長頭→短頭・外側頭→長頭→短頭・外側頭→長頭…
このルーティーンでジャイアントセットを行う事で、全体的なストレスを与える事ができ、かつ重量もある程度保ちながら鍛える事ができます。
自分にトレーニングの質をしてみよう
- トレーニングをハードに行っているか?
- 8~15レップのレンジの中で筋力は上がっているか?
- 強いマインドマッスルコネクションを、今の重量、種目で行う事が出来ているか?
- 成長を促すためのストレスと回復が行える十分な頻度でトレーニングを行う事が出来ているか?
- 対象の筋肉に、漸進性過負荷に加えてメタボリックストレスも与える事ができているか?
これらすべてのポイントを抑えることで、成長の過程を速める事ができます。これらのポイントと今まで紹介したキーに沿ってトレーニングプランを作り出してみれば、それほど難しいことでもないとわかるでしょう。
どのようなプログラムにすれば良いかピンとこない方のために、週二回のプログラム例を紹介します。基本的に、回復のプロセスが行えるだけの十分な期間が確保されていれば、一週間のうちのどこで三頭筋を鍛えても良いでしょう。
三頭筋肥大のプログラム例
【一日目】
A:リバースグリッププッシュダウン(筋肉活性) 12reps×3sets
しっかりと3秒間収縮点でホールドをする。
B:クローズドグリップベンチプレス(漸進性過負荷)
8~12reps×3sets
8レップできる重量からスタート。12レップできたら重量を増やして8レップしかできないように調整する。
C:ケーブルエクステンション、ディップス、ダンベルフレンチプレス(ジャイアントセット)
それぞれ12reps×3sets
【二日目】
A:プッシュダウン(筋肉活性)12reps×3sets
しっかりと3秒間収縮点でホールドをする。
B:リバースグリップベンチプレス(漸進性過負荷)
8~12reps×3sets
8レップできる重量からスタート。12レップできたら重量を増やして8レップしかできないように調整する。
C:ライイングエクステンション×2(メタボリックストレス)
12・12reps×3sets
額までのレンジで12回、頭の後ろまでのレンジで12回行う。
まとめ:三頭筋にフォーカスしよう
弱点部位の上腕三頭筋の改善方法を話してきましたが、参考になったでしょうか。要点をまとめると…
- 基本的に重量を増やし、負荷を増やしていく事を意識する(漸進性過負荷)。
- トレーニングをしている時は動かしている筋肉を意識しながら行う(マインドマッスルコネクション)。
- 三頭筋のトレーニング頻度と順番を改善する。
- メタボリックストレス・別々のテンションを意識し、高回数の種目やセット法も取り入れる。
腕を太くしたいという望みを持つ方も多いはずですが、今行っているトレーニングが本当に筋肥大に効果的かを見直す事が重要です。この記事で説明したことを参考に、弱点部位を強化していきましょう。
参考文献
- Carter, Paul. (2019). The 6 Keys to Big, Strong Triceps: Suffer from TTS (Tiny Triceps Syngrome)? Here’s the cure. T Nation.
- Kawakami, Yasuo., et al. (1998). Architectural and functional features of human triceps surae muscles during contraction. Journal of Apllied Physioogy.