マクマスター大学による新たな研究では、高齢者における運動が脳に与える影響を調べた結果、低強度〜中強度の運動は何の影響も与えないのに対し、高強度の運動は記憶能力の改善に繋がる事が発見されました。

高齢者の記憶力改善の鍵は「高強度」の運動

ジョギング・ランニング・有酸素運動

今回行われた研究では、世界中で影響を与え続けている認知症への治療に対して有益な結果を提供しています。認知症患者は更に増える事が予測されているため、迅速な対策が求められている現状です。

研究に関わった研究者らは、運動における強度が認知能力の改善に関わっている事を指摘しています。実験結果では、短期間の激しい運動を行なった高齢者は30%ほどの記憶能力の改善を見せた反面、中強度の運動を行なった参加者には改善は見られなかった事が主張の裏付けとなっています。

生活スタイルが認知能力に対して働く役割への理解が成されてきたのは最近であり、運動などの身体活動を通して疾患症状の改善が顕著に行われることも同様に最近までは理解されていませんでした。

今回の研究結果は、高齢者の記憶改善のために具体的にどのような運動を行えば良いのかを指摘する助けになることが期待されています。

研究方法・研究環境

研究では、参加者として雇われた12人の健康な座業を行う高齢者(60〜88歳)は12週間の実験期間中、週に3回の運動を行い、観察がなされました。

参加者のうちで、行うトレーニングの種類を3つに分割しました:

  1. 高強度インターバルトレーニング(HIIT・実験群)
  2. 中強度持続トレーニング(MICT・比較実験群)
  3. ストレッチのみ(統制群)

HIITでのトレーニングは、トレッドミルにて4分間の高強度運動と回復期間(インターバル)を1セットとし、4セットを行われ、MICTでのトレーニングは、中強度の有酸素運動を50分近く持続的に行われました。

運動に関連した記憶力の改善を理解するために、運動によって生成された新生神経の機能を確かめる特定の試験を行いました。新生神経は既存の神経よりも活発に働き、新たな神経コネクション・記憶の作成に理想的な神経とされています。

実験結果として、HIITグループはMICTグループと統制群よりも非常に高い改善を高干渉記憶において示しました。高干渉記憶では、例えば同じメーカーもしくはモデルの車を判別する能力などに関連しています。

また、運動能力の向上と記憶力の改善は直接的に相関関係があったことも明らかにされています。

身体的に活動的である事は脳の健康にも良い事はこれまでも様々な研究で指摘されてきていましたが、もし年をとった時に始めるのであれば、強度の高い運動が推奨されるという事です。

勿論、自らの現在の身体レベルに合ったトレー二ングを行う事は大切ですが、運動の強度を上げる事はいたってシンプルです。例えば、日課の散歩に丘を登ってみたり、電柱の間だけ歩くスピードを上げてみたりと、日常的なレベルで運動強度を高める事ができるのです。

参考文献

  • Kovacevic, Ana., et al. (2019). The effects of aerobic exercise intensity on memory in older adults. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. DOI: 10.1139/apnm-2019-0495