ごはんは沢山食べているのに全く太れない、という方を最近よく耳にします。遺伝や胃下垂や甲状腺ホルモン異常等の医学的原因が関係している可能性もありますが、殆どの方は単純に「太るための食習慣が無い」ことが原因となっています。

医学的な事は他のウェブサイトでも言及されているので、症状が気になる方は病院に行くことを推奨します。しかし、とりあえず今回ご紹介する食事と生活習慣の改善を試してみると良いと思います。

 

1.食生活に見る太れない原因

悩んでいる人の原因はいくつかあります。

「ラーメン週に4回食べてるけど太らない」「白米4合食べるけど太らない」等の悩みを友人に受けたことがあります。確かにラーメンはカロリーが高く、白米もそれだけ食べれば軽く1000~2000キロカロリーは摂れると思います。しかしここには太るための確実な手段二つが欠けています。

 

一日の総摂取カロリーが足りていない

先ず体重を増やす(太る)ための基礎となる考え方は、

一日の摂取カロリー>一日の消費カロリー

です。摂取カロリーというのは、毎日食事から摂るカロリーの事で、炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素から摂取することになります。消費カロリーは身体の運動によって消費されるものと、基礎代謝と呼ばれる、内臓や身体機能の維持によって消費されるものの二つから成っています。

例えば、25歳の成人男性で、身長170㎝・体重70kg、デスクワークであまり動かない人の一日の基礎代謝はおよそ1800kcalです(Calorie Calculatorより)。運動量も加味すると、およそ2300~2500kcalほどが一日の総消費カロリーとなります。

さて、ラーメン一杯のカロリーはどれほどでしょうか。かなりラーメンの種類によって差がありますが、天下一品さんが栄養成分を公開していたので、参考にさせていただきます。こってりラーメンで949kcal、あっさりラーメンで380kcalとなっています。

これほど差があるとは驚きですね。原因となっているのは、1g当たりのカロリーが高い脂質ですが、後程説明します。

では敢えてカロリーが高いこってりラーメンを一回食べたとしましょう。上記の男性をモデルにするなら、一日の消費カロリーの40%ほどを一回で摂取してしまいました。

これでもし残りの二食をきっちり食べているなら、少なくとも太れないという事は考えにくいでしょう。しかし、太れない方の中には一日一食、ないしは二食しか食事を摂っていないという方がいるのです。時間が無かったり、お腹が空かなかったりと要因は様々です。

とにかく、食事回数が少ないせいで一回に多くカロリーを摂取していても実際には消費カロリーを超えていない、という場合が多いのです。

例えばさっきのこってりラーメンを一日二食食べたとしても、1900kcal程で総摂取カロリーを超えていません。一回に食べる量が多いから、十分に食べていると勘違いしてしまっている、という事が間違いです。

更に健康面からみると、一回に多くのカロリーを摂取する事は、血糖値の急上昇を起こし、糖尿病や心臓病のリスクを高めてしまいます。

消化するための栄養素が足りていない

しかし、きっちり三食食べていて、白米も沢山食べてカロリー摂取は万全!という方でも太れない事はままあります。それが栄養の問題です。栄養不足で吸収が上手く行われず、体内に食事が吸収されていないのです。

白米やパスタといった炭水化物、特に穀類には栄養素はほとんど含まれていないと言っても良いくらいで、消化を助けるビタミン、ミネラル、その他食物酵素は他の野菜・肉類・魚介類・豆類等にはるかに多く含まれています。

また、炭水化物だけに偏るのも消化・吸収不良の原因となります。日本人の栄養摂取基準(2015年版)によるP(タンパク質)・F(脂質)C(炭水化物)3つの栄養素の一日の摂取割合(PFCバランスと呼ばれます)は、

タンパク質:13~20% 

脂質:20~30%

炭水化物:50~65%

となっています。人体は炭水化物だけで機能維持できるようにはできていないため、もし炭水化物だけを摂って生活している場合は体の機能に異常をきたす可能性もあります。また、多くの炭水化物は血糖値をより早く上昇させるため、食事回数の少なさと同様に重大な疾患に繋がる恐れがあるのです。

2.太るための食事

太る食事は沢山ありますが、ピザも手ですね。

前置きが長くなりましたが、じゃあ何を食べればいいんだ、という事を説明していきます。

良質な脂質を摂取する

栄養素をカバーしながらカロリーを摂るというのは、意外と難しいかもしれませんね。しかし、カロリーを摂るには実は脂質が一番効率的なのです。PFCのそれぞれの1g当たりに摂取できるカロリーは、タンパク質4kcal/g、炭水化物4kcal/g、そして脂質9kcal/gです。

例えば、100gの皮なし鶏胸肉はおよそ108kcalですが、たった12g(大さじ一杯)のオリーブオイルは111kcalと、ボリュームのある肉とスプーン一杯の油のカロリーがほぼ同じという事になってしまいます。つまり、脂質を多く含む食品は、少量であっても簡単にカロリーを摂る事ができるという事です。

では、良質な脂質とは?という話です。脂質には多くの種類の脂肪酸がエステルという形で含まれていますが、一つ一つの脂肪酸がそれぞれの役割を人体で成すため、一概にどれが良い悪いという事はできません。バランスが大切という事です。

しかし、脂肪酸の中でも特にバランスが崩れやすいとされているのは、多価不飽和脂肪酸(炭素の結合が多い脂肪酸)の中の、n-3系脂肪酸(オメガ3)とn-6系脂肪酸(オメガ6)と呼ばれる二つの脂肪酸です。オメガ3は魚類に多く含まれる脂肪酸で、オメガ6は植物油や大豆油等に含まれる脂肪酸です。

これら二つの脂肪酸の理想的比率は4:1(厚生労働省による)ですが、実際には10:1程度の比率で日本人は食事を摂取しているようです(世界的にも比率はオメガ6に偏りがちです)。比率が偏ると、心臓病や血管障害リスクが高まる事が示唆されています。

一つの原因としては、日本の伝統的な魚食から、近代以降の肉食への変遷が考えられます。とにかく、もっと魚を食べろ!という事です。

脂質については脂肪酸のトレーニング・ダイエットにおける重要性の記事でもう少し詳しくご紹介しています。

タンパク質を摂取する

先ほど述べた僕の友人の例では、炭水化物中心の食事となっていましたが、それでは本当に脂肪がついていくだけです。

筋肉も同じように増やしていく方が効率的ですし、僕の経験上、ただ贅肉がつくだけよりも筋肉が多少ついた体に変化した方が精神的にも自信がつき、より食事の管理をしっかり式的に行う事ができようになっていきます。

筋肉の合成には必ずアミノ酸が必要となり、アミノ酸が含まれているのはタンパク質です。非常に単純な事ですが、肉類・魚介類・乳製品・豆類に多く含まれているため、当然炭水化物にはあまり含まれていない栄養素です。

そのため、もし自分の食事に上記した食品類が少ないと感じた方は、意識的にたんぱく源となる食物を取り入れた方が良いでしょう。

具体的な食品・料理など

鮭(サーモン)や青魚

青魚はオメガ3も豊富で、値段も比較的安いです。

鮭や青魚には魚類の中でも多くの脂質が含まれていますが、これらの魚は前述したn-3脂肪酸が豊富に含まれているため、カロリーの確保と脂質のバランス取りに適した食べ物です。特にイワシやサバ、アジ等は比較的お財布に優しいため、おススメします。

料理:鮭の塩焼き・イワシのオリーブオイル漬け・サバの味噌煮・アジのフライなど

アボカド

アボカドは野菜の中でも非常に脂質と栄養素が豊富な食品の一つです。

アボカドには多くの一価不飽和脂肪酸である『オレイン酸』が多く含まれ、コレステロール値を減らし、抗酸化物質(細胞を守る物質)・食物繊維にも富んでいる事でよく知られる、『森のバター』です。アボカド一つでおよそ250~270程度のカロリーが摂取できるため、高カロリーで健康促進効果も期待できる良い食品です。

料理:アボカドとチーズとベーコンのオーブン焼き、アボカドとマグロの醤油和えなど

チーズ・卵

卵はスーパーの中では確実に一番安いたんぱく源です。

チーズ・卵は飽和脂肪酸が多く含まれており、過剰摂取には注意ですが、非常に手軽に料理に加える事ができるため使い勝手もよく、脂質の含有量も多いため太るには最低な食材と言えるでしょう。また、卵は非常に安く仕入れる事も可能であるため、たんぱく源・微量栄養素源として手に取りやすいというのも魅力です。

料理:チーズオムレツ等、何でも好きなものに

ナッツ

ナッツの中でアーモンドは栄養素が豊富で、健康効果も高いとされています。

ナッツ類はビタミンEなどの抗酸化物質や食物繊維、その他ミネラルなどの微量栄養素を多く含んでおり、種類も豊富なため、飽きることなく手軽におやつとして食べる事ができます。持ち運びにも便利であるのが良い点の一つですね。カロリーも、例えばアーモンドは10gで約70kcalと、優秀なカロリー濃度です。

料理:刻んでサラダに散らしたり、香りづけに

オリーブオイル

オリーブオイルは使い道も多様な健康の代名詞となる油です。

料理に使う油としては、オリーブオイルを選ぶと良いでしょう。他の植物油や大豆油には多くのn-6脂肪酸が含まれているため、脂肪酸のバランスが崩れてしまう可能性もあります。対して、オリーブオイルに含まれている脂質は、アボカドやアーモンドと同様のオレイン酸です。悪玉コレステロールを減らしてくれるため、カロリーを摂るために脂質を多く摂っている場合には特に重要な脂肪酸となります。

料理:サラダやクッキング、パンのお供にも

ピーナツバター

ピーナツバターは太るためのもの。

太る食品の代名詞とも言えるピーナツバターですが、案外オメガ6や飽和脂肪酸が多く含まれているので注意が必要です。しかし、パン食が多い人や甘いものが好きな人は味のバリエーションとして積極的に使っても良いでしょう。ピーナッツから摂取できる、植物性タンパク質も良いたんぱく源になります。

料理:セロリのピーナッツバター乗せ、鶏肉のピーナツバター焼き、ピーナツバタースープ等

牛乳・豆乳

牛乳は他の食事とも相性が良く、取り入れやすい食品です。

乳製品は総じて優秀なたんぱく源であり、同時に脂質が豊富に含まれている食物でもあります。朝食に添えたり、小腹が空いたとき、のどが渇いた時、料理の調味料として等使い道も幅が広いです。

それに加えて、牛乳にはカルシウムや鉄分などのミネラルが多く含まれており、豆乳にはイソフラボン等の独自の働きをする栄養素があるため、それぞれの栄養メリットも利用する事ができるため、健康に体重を増やすためにも力強い味方になってくれるでしょう。

料理:鮭のホワイトシチュー、豆乳パンケーキ、鶏肉と根菜のスープ等

サプリメント(プロテイン、オメガ3)

プロテインはバランスよくアミノ酸を含むタンパク質の塊みたいなもので、タンパク質があまり摂れない、という一般の人には是非活用していただきたいサプリメントです。近年は様々なフレーバーのプロテインが販売されており、スイーツ感覚で飲むこともできるため、サプリメントだから不味い、という意識も持つ必要はありません

オメガ3のサプリメントは、魚をあまり摂れないという人には非常に有用です。実際魚は調理が面倒だったり、値段が高かったりと、買う事を避けてしまいがちです。オメガ3の摂取は、オメガ6とのバランスを保つためだけではなく、肌の状態を改善したり中性脂肪・悪玉コレステロールを減らしたりと、多くの効能が報告されています。太るために多くの脂質を摂取する場合には特に必須と言っても良い脂肪酸であるため、積極的にサプリメントを利用する事を推奨します。

3.太るための生活習慣

筋トレは実は太るためにも活用できます。

筋トレをする

先ほどタンパク質を摂る事で筋肉も増やした方が良い事を話しましたが、筋トレを行う事でその効果を最大限に引き上げる事ができます。痩せている人でも正しい方法でトレーニングを行う事で筋肉は必ずつける事ができます。ただ、筋トレは始めなければ効果はありません(当たり前ですが)。

ジムに行ってハードにトレーニングをしろとは言いません。逆に、最初から意気込んでいると途中でマンネリ化や、やる気が燃え尽きて辞めてしまう傾向にあります。

大切なのは、「いかにして継続するか」です。「一日に腕立て伏せ十回を週に4日」という簡単な事でも、それをしっかりと守って継続、そして習慣化することで自分の中で筋トレへの距離が近くなり、体にも変化が訪れてきます。

実際に僕も高校の時にトレーニングを家で始めた際は、腕立て伏せ10回を三セット、腹筋を少し、とかなり適当に、暇つぶし程度に行っていただけでした。しかし、半年ほど経つと周りの友人から筋肉を褒められるほどになり、気づけば体重にも変化が訪れていたのです。

「継続こそ力なり」とはよく言うものですが、体重を増やすのも、筋肉を増やすのも、全く持って「継続」が重要である、という事です。

間食を増やす

間食、というのはダイエットをする上でも必要な事とされていますが、太れない人が太ろうとするときには更に重要です。なぜなら、間食はカロリーを摂る機会を増やす事と同義であるためです。

一回で多く食事を摂る事ができる人もいれば、一回に少量しか食べる事も出来ない人もいるでしょう。どちらの場合であっても、例えばピーナツバターをクラッカーに乗せておやつにする程度の事は可能であるはずです。

多くの量を摂ると、逆にその後の昼飯や夕飯の際にしっかりとカロリーを摂る事ができなくなるかもしれないため、少量で多くのカロリーを摂る事ができるピーナツバターやアボカド、ナッツなどを仕事の合間、学校の休憩時間などに食べることで摂取カロリーの引き上げを図りましょう。

十分な睡眠をとる

軽視されがちであるのは、睡眠時間です。しっかりと眠る事ができて初めて細胞や内臓が正常に働き、消化にも貢献するのです。体の機能を保つためにも休養は十分に摂り、6時間ほどは寝る事を推奨します。せっかくカロリーを摂ったとしても、消化管の働きが正常でないと、栄養素が体に取りこまれずに体外へ排出されるだけですからね。

もしも夜に眠る事ができないという方は、まさに筋トレを行うべきでしょう。トレーニングを行う事で睡眠の質が高まる事が研究で示されています。

まとめ

今回は、太る事ができない人の為の食事と生活習慣に焦点を当てて書かせていただきました。身体的な病気や疾患を疑われる方は医師に相談の上で指導を受けた方が良いでしょうが、殆どの場合は「カロリーと栄養が足りていない」の一言で、問題を言い表せる事と思います。

紹介した食品・サプリメントを参考に、できれば筋トレを少しずつ始め、摂取カロリーを増やしていただければ、確実に体重を増やしていくことができるはずなので、是非トライしてみてください。