アルコールが体に悪いという事は周知の事実かもしれませんが、『テストステロンを増やすためには、お酒は飲んではいけないのか?』という疑問は残ります。
以前公開した「テストステロンを自然に増やす8つの方法」では、アルコールの過剰摂取は避けた方が良いと書きました。しかし、どの位の量がダメなんでしょうか?どのようにテストステロンとアルコールが人体で作用するんでしょうか?この記事ではこのような疑問に答えていきたいと思います。
テストステロンとアルコールの関係性
まず結論から言うと、アルコールはテストステロンのレベルを下げる可能性が高い反面、完全にお酒をやめる必要は無い、という事です。
数杯のお酒であれば、テストステロンへの影響はほとんどないと考えられるため、アルコールに関しては摂取量が大切なのです。
例えばアルコール依存症の方で、一週間に吐くまで飲む日が何日もあるという人は、間違いなくテストステロンのレベルは下がっている事でしょう。
人体へのアルコールの働き
では、どのようにアルコールが体の中で働き、どのようにテストステロンのレベルに影響をしていくのかを簡単に見ていきましょう。
・エタノール(お酒)の代謝は、肝臓と精巣中の補助酵素であるNAD+の量を下げます。NAD+はテストステロンと他のアンドロゲンの生産に必要な電子伝達の過程で重要な役割を果たしています。つまり、NAD+の量を下げるエタノールは、結果的にテストステロンの量を下げる事になるのです。
・アルコールは、脳を刺激してβエンドルフィンを放出させることで、身体をリラックスさせる効果を持っています。しかし残念な事に、エンドルフィンはテストステロンの合成にネガティブな影響を持っている事も研究で報告されています[1]。
・アルコール摂取は精巣内のライディッヒ細胞や他の体内繊維に酸化ダメージを与えます。この事により、精巣内のテストステロンの減退を引き起こし、更にストレスホルモンであるコルチゾールの影響で、体内を循環しているテストステロン傷つけられてしまいます。
・慢性的なアルコール摂取は、かなり大きなエストロゲンの上昇を引き起こします。これは、アロマターゼと呼ばれる酵素の働きが活性化される事で、テストステロンがエストロゲンに変化されるようになってしまうからです。
テストステロン値に関する研究
1.ラットを対象にした研究では、アルコールの摂取によるテストステロン値の減少が報告されています[2],[3]。一つの研究では、一日の摂取カロリーの5%をエタノールから摂取したラットは、睾丸のサイズが50%に縮小していたようです。
2.人を対象とした多くの研究で、アルコールの多量摂取はテストステロンのレベルを下降させることが分かっています。また、アルコール依存症の男性においては、たとえ肝臓の機能が通常であっても、テストステロンのレベルは高く、エストロゲンのレベルは高いという結果が出ています。
3.しかし、ネガティブな研究結果だけではありません。実は、0.5g/kg(体重70㎏の場合は35gほど)の少量のアルコール摂取では、むしろテストステロンの上昇が見られた研究もあります[4]。更に、トレーニングの後にポストワークアウトとして1g/kgのアルコールを摂った場合に、80~90%ものテストステロン値の上昇が見られたという、驚くべき研究も公表されています[5]。しかし、酔っぱらった状態や二日酔いでトレーニングを行った場合には、テストステロンの減少の効果は強くなるようなので、トレーニングとアルコールを掛け合わせる際には注意が必要です。
結論
このように、テストステロンと増やすこととアルコールの摂取は、決して協力関係にあるとは言い難いです。内分泌系の機能にネガティブな影響を及ぼすことが分かっているからですね。
しかし、少量の摂取であれば大丈夫だという意見は多く、テストステロンを増やす効果にも繋がる可能性はあるようです。
個人のアルコールへの耐性にもよるかもしれませんが、1~3杯程度のお酒であれば、テストステロン値を気にする必要はないと考えられます。しかし、それ以上になると、男性ホルモン値に影響がある可能性は高くなるでしょう。
僕も時々友人や家族と軽く飲むくらいにとどめています。テストステロンにとっても健康にとっても、お酒はたしなむ程度が一番良いのかもしれません。