インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)とコペンハーゲン大学、ユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリンとの連携によって行われた研究は、GOPと呼ばれるホルモンの注射によって、肥満患者が平均4.4㎏の体重減少に成功し、血糖値の改善にも影響した事を示唆しています。

肥満患者のダイエットに有効なホルモン注射

注射

今回の研究が行われたイギリスでは、成人の4人に1人は肥満である事が推定されています。

体重を減らすのに一般的な手術として、胃バイパス手術があり、糖尿病患者において体重減少と血糖値改善に効果的である事が知られています。

しかし、胃バイパス手術は腹痛や慢性的おう吐感、低血糖値への弱化などの合併症を引き起こす可能性が示唆されており、患者の中では手術を避ける人も少なくありません。

インペリアル・カレッジ・ロンドンによって行われた以前の研究で、胃バイパス手術はGOPと呼ばれる、腸内から分泌されるホルモンによって効果が現れる事を明らかにしており、ホルモンの働きとして空腹抑制、体重減少、糖代謝の向上等に貢献する事が判明しています。

今回の研究では、GOPホルモンであるグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)とオキシモジュリンペプチドの投与による胃バイパス手術の効果の模倣のによって、手術を行う事なく体重減少と血糖値改善の効果が表現するかを調査しました。

26人の肥満患者が参加し、15人にGOPホルモン注射を施し、11人はプラシーボ群として食塩水を投与しました。また、21人の肥満外科手術(胃バイパス手術)を受ける患者と、22人の低カロリーダイエットを行う患者との比較実験も行いました。

実験は4週間の期間で行われ、GOPホルモンは朝食の1時間前から最後の食事の後までの12時間の間に、ゆっくりと投与されました。また、研究期間中に患者は食事に対するアドバイスを栄養管理士から受けました。

結果として、食塩水を与えたグループが平均2.5㎏体重の減少が見られたのに対し、GOPホルモンを投与されたグループは平均で4.4㎏の減少が見られ、副作用は見られませんでした。

しかしながら、肥満外科手術を受けた患者は平均10.3㎏、低カロリーダイエットを実行した患者は平均8.3㎏の体重減少がそれぞれ見られ、GOP患者よりも減少幅は大きい結果になりました。

外科手術よりも効果は低い結果となりましたが、副作用が無く行う事の出来る治療であるため、安全性などを考慮した場合GOP投与の方が好まれる事になると、論文の代表著者であるTan教授は主張しています。

また、血糖値の改善に関してはGOP群でも外科手術群でも見られましたが、GOP群では血糖値の変動が少なく、反対に外科手術群では血糖値の変動がより大きく、低血糖状態への脆弱性が指摘される結果となりました。

研究チームはこれからの研究として、より多くの患者による長期間の実験を行う事を試みています。

参考文献

  • Laat, de Bart., et al. (2019). The Kappa Opioid Receptor Is Associated With Naltrexone-Induced Reduction of Drinking and Craving. Biological Psychiatry. DOI: 10.1016/j.biopsych.2019.05.021