VIB(The Flanders Institute of Biotechnology)の研究者たちが発見したところによると、サッカロマイセスブラウディ(Saccharomyces boulardii、サッカロミケスとも)と呼ばれるプロバイオティクスの特性を持つイースト菌が非常に多くの酢酸を生成するようです。
更に、その特質の遺伝的基盤の発見もなされているため、イースト菌の酢酸生成の調節も可能になる事が示唆されています。
プロバイオティクスのイースト菌の仕組み
サッカロマイセスブラウディは、1923年にフランスの科学者ヘンリ・ブラード(Henri Boulad)によって東南アジアのライチから発見された、プロバイオティクスの特性を持つイースト菌で、下痢や腸内疾患への治療に使われ始め、現在世界中の薬局で売られているものです。
最近のゲノムDNA分析によって、このイースト菌はサッカロマイセスセレビステ(出芽酵母)と呼ばれる、パン作りやビール醸造、ワイン作成等に一般的に広く使われているイースト菌に近しい関係を持っている事が判明していましたが、何故サッカロマイセスブラウディはプロバイオティクスの特質を持っているのかは明らかになっていませんでした。
今回行われた研究によって、酢の主な原料である酢酸の生成がサッカロマイセスブラウディには見られる事が明確になりました。
酢酸は保存作用があり、全ての微生物の繁殖を抑制する効果がある事が知られており、この作用がサッカロマイセスブラウディのプロバイオティクスの特徴を形作っているとされています。
サッカロマイセスブラウディ内では2つの突然変異が確認されており、この変異がサッカロマイセスセレビステと異なる遺伝的指紋を表現し、サッカロマイセスブラウディの特徴を孤立化・識別化可能である事が報告されています。
これらの知識を基に、CRISPR/Casゲノム編集による酢酸の完全な排除・更なる増加の両方を行う事も同時に可能になり、動物実験などによって、サッカロマイセスブラウディのプロバイオティクスとしての酢酸の重要性への試験を行うための調整に使用される事が期待されています。
参考文献
- offei, Benjamin., et al. (2019). Unique genetic basis of the distinct antibiotic potency of high acetic acid production in the probiotic yeast Saccharomyces cerevisiae var. boulardii. Genome Research. DOI: 10.1101/gr.243147.118