人間の触覚は日常の至るところで使用されており、人体の重要な保護防衛システムとしても役割を果たしています。しかし、人間のかゆみを感じるプロセスは通常の触覚とは異なるようです。

カルフォルニアのソルク研究所の研究員によって公表された新たな論文によると、脊髄に存在するY1神経が、脳にかゆみを伝達する役割の一端を担っていることを発見し、どのように働いているのかを明らかにしました。

脳がかゆみを感じるメカニズム

かゆみ

今回の研究が発見したところでは、かゆみの感覚は他の触覚とは異なり、脊髄の中にある特別な回路を通じて伝達されるようです。

以前に行われた研究では、ほとんどの間かゆみの機械的かゆみ回路のスイッチをオフに保つ事で、細胞抑制に類似した働きを持つ阻害神経が発見されています。

神経伝達物神経ペプチドYNPY)と呼ばれるそれらの神経がなければ、かゆみの回路は持続的にオンの状態になり、慢性的なかゆみを引き起こします。

以前の研究で理解されていなかった、かゆみの信号の脳への伝達方法が今回の研究で明らかにされました。

研究チームは、NPY阻害神経が無くなった時、脊髄に存在する、通常では触覚の伝達として機能する神経がオンの位置に固定された加速装置のような役割を果たすよ推論しました。

更に、脊髄のY1脊髄神経と呼ばれている、NPYの受容体を表出させる興奮性神経の集合体である触覚神経を研究対象として発見しました。

加速装置としてこれらの神経が働くかどうかを調べるために、マウスを使用して、選択的にNPY「抑制」神経と、Y1「加速」神経の両方をマウスから除外しました。

実験結果、Y1神経が無い場合では、通常かゆみを引き起こす触覚刺激に対してもマウスはかゆみを引き起さず、逆にY1神経を活性化させた場合には、触覚刺激がまったく無い状態でもマウスはかゆみを示しました。

Y1神経の興奮性のコントロールを行うNPY神経伝達物質は、触覚に対する人体の感受性をコントロールする自動調節器の役割を果たしていることが確認されています。

他の研究所からのデータでは、乾癬に罹患している患者のNPYの値は、平均的な値よりも低いことが判明しており、効果的なかゆみの抑制ができていない事がかゆみの原因である可能性が示唆されています。

Y1神経は脊髄中でかゆみ信号を伝達する一方で、他の神経は脳の中の最終的な反応を調停する責務を負っていると考えられていますが、かゆみの全体的な回路をマッピングするには更なる研究が必要であるようです。

今回の研究は、慢性的な痒みへの理解と、痒みに苦しんでいる患者への対症薬の開発に繋がることが期待されています。