世界中で食べられているチョコレートや、ココアなどの原料であるカカオには、多くの健康に良い栄養効果がある事が判明しています。
お菓子の材料としてよく使われているココアパウダーは、カカオを砕いて脂肪(ココアバター)を取り除いたもの、もしくは量を少なくしたものです。
今回はカカオの様々な栄養効果を紹介するとともに、チョコレートやココアなどの製品を食べる時の注意点も最後に解説していきたいと思います。
- カカオにはフラボノールが多く含まれており、抗炎症作用やコレステロール値・血糖値改善効果がある。
- 1日に19〜30g程度のチョコレート(or他のカカオ製品)心臓や脳の病気のリスクを低くする。
- カカオの中に含まれるポリフェノールやカフェインは、気分・鬱状態の改善に関係している。
- 長期的にカカオを食べる事で口内健康の改善と皮膚・肌の保護に役立つ。
- ダークチョコレートなどカカオを多く含んだ食べ物を日常的に食べるとダイエットの効果が促進される。
⒈カカオに豊富に含まれるポリフェノールの効果
ポリフェノールはファイトケミカルと呼ばれる、植物に含まれる抗酸化物質の一種で、果物や野菜、お茶やワインなどに含まれる物質で、多くの種類があります。
ポリフェノールは体内の炎症を抑えたり、血流をよくしたり、血圧を低くしたり、コレステロール値や血糖値を改善したりと、多くの健康に良い効果があります。
カカオはそのポリフェノールを非常に多く含んでおり、特にフラボノールと呼ばれる抗酸化作用・抗炎症作用があるポリフェノールが豊富です。
しかし、加工してチョコレートなどの製品にする過程で、加熱をしたりアルカリと混ぜて苦味を減らしたりすると、フラボノールの含有量は減ってしまいます。
そのため、カカオを含む製品の中ではフラボノールの含有量に10倍ほどの差が出ることもあるようです(研究)。
⒉血圧を下げる
カカオは、粉末の状態でも、チョコレートの状態でも血圧を下げる効果がある事が研究で示されています。
ココアに含まれるフラボノールには、血中の窒素濃度を改善する働きがあり、血管を広げて血液の流れを良くする事で血圧を低くする作用があると考えられています。
あるレビュー研究では、1.4–105gのカカオ製品を摂取した患者を対象とした35の研究を解析し、カカオによる2mmHgの顕著な血圧低下があったことを発見しています。特にもともと血圧が高い人や高齢者に大きな作用があるようです(研究)。
⒊心臓発作や脳卒中の予防
先ほど説明したように、カカオの中のフラボノールが窒素の濃度に作用する事で、動脈・血管を拡張させる事で血流が改善されます。
更に、カカオはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らし、血糖値を改善し、炎症を少なくする効果もあります。
これらのカカオに見られる特徴は心臓発作や心疾患、脳卒中などの病気のリスクの低下に繋がります。
合計15万人を対象とした9つの研究を解析しレビューでは、チョコレートを多く食べていた人ほど心臓発作や脳卒中からの死亡リスクが低かったことを発見しています(研究)。
また、他の研究によって1日に19〜30g程のチョコレートを食べると心不全のリスクが下がったことが示されており、30g以上チョコレートを食べても効果は得られなかったようです(研究)。
このように、日常的にチョコレートを少し食べるだけでもカカオの効果によって病気のリスクを減らす事ができるのです。
⒋血流改善による脳機能の修復
カカオにも含まれているポリフェノールは、血流と脳機能を改善することで神経変性病(アルツハイマー病やパーキンソン病など)のリスクを低下させる働きがある事が判明しています。
特にカカオが多く含んでいるフラボノールは、窒素の生成に影響する事で血管の筋肉を弛緩させ、脳に送られる血液量を多くします。
34人の高齢者を対象とした研究では、2週間のカカオの摂取で脳への血流量が10%増加した事が判明しており、他の研究でも毎日カカオを摂ることで精神状態の改善などに貢献したことを示しています。
まだ研究は進められており、病気への効果は確定したものではありませんが、脳機能の改善効果がある事が複数の研究からわかります。
⒌精神衛生の改善とリラックス効果
カカオには気分や鬱状態の改善にも関係しているようです。
この影響はカカオのフラボノールやトリプトファンのセロトニンへの変換、カフェインなどの影響だと考えられていますが、単純に美味しいチョコレートを食べる事が気分の向上につながっている可能性もあるようです。
妊娠中の妊婦を対象にしたチョコレートの摂取の研究、より頻繁にチョコレートを食べていた人ほど、胎児のストレスや気分が改善されていたことが発見されています。
また、高齢者を対象とした研究では、チョコレートを食べることで全体的な健康状態・精神衛生の改善がなされている事が示されています。
⒍フラボノールによる糖尿病の改善
チョコレートの食べ過ぎは血糖値の上昇につながるため糖尿病によくありませんが、カカオ自体には糖尿病を改善させる効果があります。
カカオのフラボノールは、①腸内での炭水化物の消化と吸収を遅め、②インスリンの分泌を促し、③血中から筋肉へ糖が運ばれるように刺激をする役割をしている事が研究で明らかにされています。
更に、フラボノールが多く含まれているダークチョコレートの摂取はインスリン抵抗性を低下させ、血糖値コントロールの働きを改善させる効果があり、第II型糖尿病のリスクを低下させる作用が確認されています。
⒎ダイエット・体重維持効果
チョコレートはダイエットに悪いお菓子だとされがちですが、カカオを多く含んだダークチョコレート などはダイエットの味方である可能性が高いのです。
カカオは消費エネルギーをコントロールして、脂肪燃焼を促し満腹感を与える事が複数の研究(1、2)で判明しています。
また他の研究では、チョコレートを頻繁に食べていたグループはカロリーと脂質の摂取量が多いにも関わらず、食べていないグループと比べてBMIが低い結果を得ています。
ダイエット効果としては、42gのカカオ81%チョコレートを毎日食べた場合に痩せるスピードが早かった事が明らかにされています。
ミルクチョコレートやホワイトチョコレートなどの砂糖を多く含んでいるチョコレートは逆に太ってしまうという研究があるため、効果があるのはカカオを多く含んでいるチョコレートに限られるようです。
⒏皮膚の改善や口内ケアに
カカオは、その免疫作用・抗菌作用から、口内での細菌の繁殖抑え、虫歯の形成や歯茎の病気から保護する作用がある事が期待されています。
しかし、砂糖の多く入ったチョコレートは逆効果である事がこれまでの研究で確証されているため、カカオ自体・カカオを多く含んだ製品を食べなければ口内健康への効果は期待できません。
カカオはよくニキビの原因とされる事が多いですが、むしろカカオポリフェノールは皮膚に対して良い影響がある事が研究で示されています。
長期間にわたるカカオの摂取は、日射からの保護や皮膚内の血液循環の促進、肌の質感と潤いの改善などの効果がある事が複数の研究で示されているため、カカオは肌・皮膚などの美容面でも非常に重宝される存在です。
摂取量と栄養価の注意点
多くの栄養的効能のあるカカオですが、栄養成分としては脂質を多く含んでいるため、カロリーもその分高い傾向にあります。
例えば、カカオ80%チョコレート34g(一食分)には、脂質16g、炭水化物18g、タンパク質4gが含まれており、一食だけで210kcalも摂ることができてしまいます。
いくら健康に良いからといって沢山食べてしまうと、肥満の原因となったり砂糖の取りすぎになってしまうため、食べる量をしっかりコントロールをしないと健康に悪影響を及ぼします。
摂取量の目安としては、研究で効果が確認されている19g〜42g程度にしておくのが良いでしょう。
また、チョコレートなどの砂糖を含んだカカオ 製品を食べる時には、必ずカカオの含有量が多いものを選ぶようにしましょう(チョコレートならカカオ70%以上が良し)。