海洋栽培や海洋養殖としてい知られている魚介類の農業は世界でトレンド化していますが、その開発の軌跡に関してはあまり知られていません。

フロリダ州立大学の研究者らは、海洋養殖業と他の要素を関連づけることで、海洋養殖を政治的・経済的状況の形成要因の一つとして捉える見方を示しています。

魚介養殖の生産量はGDPと文化レベルに対応している

養殖業・海洋農業

研究では、100ヶ国以上の国からの1950年から2016年までの60年以上の期間にわたる調査データを収集し、分析を行うで地球上で行われている海洋養殖業のパターンの輪郭を明らかにしました。

今日では、海洋養殖は世界の食糧生産に必要不可欠なものとしての認識が高まっており、変化する食料システムへ対応し、や経済成長、食料保障、環境持続性などを確保するためにも養殖業開発のパターンを理解する事は重要な意味を持っている事が研究チームによって指摘されています。

研究チームは、異なる養殖生産の開発経歴と魚介類とエビやかになどの甲殻類を含む特定の種の生産量を調査し、安定した生産量を確保している国(以下安定国)では、他の開発経歴を持つ国々と比較した場合に生物種の多様性が高いかった事を発見しました。

例えば、安定国は平均して15.2種の生物を生産しており、生産の低下を経験している国の平均6.5種と比較すると2倍以上の海洋生物多様性を示しています。

この結果より、海洋養殖業の生産物における多様性の増加は、より活発で回復力のある海産物生産を支援する働きの可能性がある事が主張されています。

また、開発経歴と生物の種類の間にもつながりが有ることを発見しており、特に初期の頃から軟体動物や貝類(牡蠣やムール貝など)を養殖していた国は、初期に魚介類を養殖していた国々に比べて安定した生産を保つ傾向にあった事が示されています。

更に、国の統治・経済指標は、海洋養殖生産の経歴と関連していることも明らかにされています。

例えば、低生産国はGDP(国内総生産)スコアが低い傾向にあり、政治統制の質に関しても低く、インターネットのコネクションも弱い事が判明しています。

同様に、多くの国々では潜在的生産性よりもかなり低いレベルでの養殖生産が行われていた事が明確にされています。

これらの研究結果から、政治的、統治的、または経済的変化によって生産力の低い国の更なる成長機会が見込まれています。

地域の過剰開発や環境汚染、非持続可能養殖などを防ぐための環境法治は必要である事が示されている一方で、潜在的海洋生産性を引き出していない国に関しては、全体的な成長促進するためにも養殖業に関する新たな政策を考慮する価値があると指摘されています。

他の種類の食糧生産の限界が見え、人口増加の一途をたどる世界で、海洋生産の更なる可能性への理解が必要とされてます。

参考文献

  • Gentry, R. R., et al. (2019). Temporal patterns of adoption of mariculture innovation globally. Nature Sustainability. DOI: 10.1038/s41893-019-0395-y