ジョスリン糖尿病センターによる研究では、食事から多くの果糖を摂取した場合、肝臓の脂肪代謝機能を阻害する影響が見られる事が発見されました。

この影響は果糖だけに見られ、グルコース(ブドウ糖)が多い食事は、相反して肝臓の脂肪燃焼機能を改善する働きがある事が判明しています。

果糖を多く含む食事は脂肪代謝の低下の原因に

果糖・果物

今回の研究によって、果糖の多い食事は、グルコースの多い食事と比較した場合に、健康への悪影響が大きい理由の一つが明らかにされたことになります。

果糖は肝臓に脂肪が溜まりやすい状態を作り出し、食事から摂れる脂質の代謝をしにくくする働きをするとされ、「脂質の摂取量が二倍になるようなもの」であると説明されています。

果糖の多量摂取は、肝臓内での脂肪燃焼機能を阻害し脂肪の貯蓄を助長する事で、肝臓だけでなく体全体の代謝機能に悪影響を及ぼす事が示唆されています。

果糖の代わりにグルコースへと糖の種類を変える事で、カロリーは同じであっても、通常の高脂質ダイエット等に比べて代謝機能の改善効果が見られるため、炭水化物を摂取する場合には、グルコースの摂取が推奨されるようです。

脂肪燃焼メカニズムとミトコンドリア

肝臓内の脂肪代謝の変化が起きるメカニズムを調査するべく、研究者らは6種類の異なる食事を与える動物実験を行いました:

  1. 通常の食事
  2. 果糖を多く含む食事
  3. グルコースを多く含む食事
  4. 脂質を多く含む食事
  5. 脂質と果糖を多く含む食事
  6. 脂質とグルコースを多く含む食事

実験内では、それぞれの食事の影響を調べるために、脂肪肝の兆候を示すマーカーを分析しました。

例えば、アシルカルニチンは肝臓が脂肪を燃やしている時に生成されるため、アシルカルニチンの値が高ければ肝臓に多くの脂肪が存在しているため、悪影響が及ぼされている兆しだとわかります。

アシルカルニチンに関しては、「5.脂質と果糖を多く含む食事」を与えられていたグループが最も高い値を見せました。

また、「6.脂質とグルコースを多く含む食事」は「4.脂質のみを多く含む食事」よりもアシルカルニチンの値が低い事が発見されたため、グルコースが脂肪燃焼の効果を発揮することが示唆されています。

同様に、研究内ではCPT1aと呼ばれる脂肪燃焼に関わる重要な酵素の働きも観察しました。

CPT1aはアシルカルニチンとは逆に、値が高いほど良く、ミトコンドリアが脂肪燃焼の役割を正常に果たしている事を表しています。

「5.脂質と果糖を多く含む食事」では、CPT1aの値は低く、ミトコンドリアの活動が非常に低い事から、ミトコンドリアが正常に機能していない事が観察されました。ミトコンドリア

ミトコンドリア自身への調査も行われた結果、健康なミトコンドリアはよく知られている卵の形を保っている反面、「5.脂質と果糖を多く含む食事」におけるミトコンドリアの形は崩壊しており、健康なものと比べて脂肪の燃焼が難しくなっている事が判明しました。

また、「6.脂質とグルコースを多く含む食事」の場合は、ミトコンドリアは通常の形をしており、脂肪も正常に燃やすことができていました。

これらの研究結果は、「4.脂質を多く含む食事」と「5.脂質と果糖を多く含む食事」の両方がミトコンドリアに損傷を与え、肝臓が脂肪を合成・貯蓄しやすくさせる(=太りやすくさせる)影響がある事を証明しています。

果糖代謝の阻害薬の開発によって、果糖の悪影響を抑制し、脂肪肝を予防する効果が期待できる事を、研究チームは示唆しています。