ワキシーメイズスターチ(waxy maize starch, WMS)をご存じですか?たまにAmazonやiHerbでみかけますが、聞きなれない名前ですね。
「スターチ(でんぷん)」という名前の通り、トレーニング後等に使う炭水化物のサプリメントです。では、どんな特徴・メリットがあるのでしょうか。
ワキシーメイズスターチはとうもろこしでんぷん
ワキシーメイズ、というのはトウモロコシの一種で、加熱すると粘着性(wax)が出てくる品種です。ワキシーメイズのでんぷんを抽出したものが、ワキシーメイズスターチ、という炭水化物です。
その粘着質のもととなるのがアミロペクチンであり、ワキシーメイズスターチの特徴の一つです。
アミロペクチンは吸収が速い
アミノペクチンは植物に含まれるグルコース(ブドウ糖)の長分岐鎖重合体です。アミロースと共にでんぷんを形成する要素の一でもあります。
長分岐鎖重合体と言ってもイメージはわかないでしょうが、グルコースの分子一つ一つが長い鎖になっていくつにも分かれて繋がっている事を想像していただければよいと思います。
分岐が沢山あるほど唾液や胃液などによって分解されやすくなるため、吸収も速くなります。
分岐が少ないアミロースとは違い、アミロペクチンは分子構造上で分岐が沢山あるため、アミロースよりもより速く酵素によって分解される性質を持っているのです。
例えば、もち米は白米よりもアミロペクチンが多く含まれており、吸収もより速くされる事になります。
ワキシーメイズスターチを摂るメリット
ワキシーメイズスターチに関しては日本語の情報が少ないですが、海外では幾つかの研究が発表されています。
一般的な単糖類よりインスリン上昇をさせない
ワキシーメイズスターチは、白パンと同じくらいの血糖値の上昇で、GI値(グリセミック指数)はおよそ90ほどに設定されています。他の炭水化物サプリメントに比べると血糖値の上昇は穏やかですが、それでも高GI値の炭水化物であると言えます。
高GIである反面、インスリンの分泌は非常にゆっくりであるようです。
ある研究では、複合炭水化物(吸収がゆっくりな炭水化物)とワキシーメイズスターチの摂取におけるインスリン分泌の比較をする実験を行ったところ、インスリンの分泌は両者で殆ど変わりはないという結果になりました[1]。
グリセミック指数(GI値とも)は、ある炭水化物の血中のグルコース濃度の上昇幅を表したものです。例えば、オートミールはGI値が55ほどで、一時間あたりに55だけ血中にグルコースを放出させることを表しています。簡単に言えば、どれだけ速くグルコースの量を増やすかを示した値ですね。
長時間エネルギーを供給してくれる
ある研究では、トレーニング後のワキシーメイズスターチの摂取は、血糖値とインスリンの血中濃度の上昇を鈍らせ、一定の値を長時間保つ効果が得られたことが明らかになっています[2]。
アミロペクチンはグリセミック指数が高いのに、どうして長期間エネルギーを保つ事ができるのか?という疑問はあるかもしれません。
普通のアミロペクチンなら血糖値を上昇させてインスリンを放出させ、結果的に肝臓や筋肉・脂肪細胞へグリコーゲンとして蓄えられていきます。
しかし、ワキシーメイズスターチは血中に入る過程でインスリンをあまり反応させないのです。実際に、先ほどの[1]の研究では、GI値の低い炭水化物とワキシーメイズスターチは同じくらいのインスリン上昇をみせ、デキストリンの三分の一以下の速さで吸収されたとの結果が出ています。
そのため、血糖値が高いためすぐにエネルギーとして使える上、血中から細胞へのエネルギー供給が滞ることなく、長時間の間細胞にグルコースが補填され続ける事になるのです。
グリコーゲンの回復は他の単糖類と同じ
長時間ゆっくりと細胞に運ばれるワキシーメイズスターチですが、筋グリコーゲンの回復は、他の速く吸収される炭水化物と比べても全く変わりはないようです。
デキストリンとマルトデキストリンの二つのメジャーな炭水化物のサプリメントと比較した実験では、24時間のグリコーゲン補充効果は三つのサプリメントでほとんど同じ結果になりました[3]。
- GI値がそれなりに高いが、インスリンを素早く分泌させない
- 長時間にわたってエネルギーを供給し続ける
- グリコーゲンの補充は他の炭水化物サプリメントと同様に行われる
トレーニング前・中・後や間食に摂ろう
血糖値の上昇はそれなりに速く、加えて長時間にわたってエネルギーが供給されるため、ワキシーメイズスターチはプリワークアウトやイントラワークアウトのカーボドリンクとして使う事ができます。
また、グリコーゲンの回復の観点からみても、他の吸収が速いデキストリンなどと同様の結果が得られるようなので、トレーニング後のグリコーゲンの補充に使う事も考えられるでしょう。
更には、インスリンの急分泌を引き起こさないため、間食として摂っても脂肪になりにくい、というメリットがあります。おやつに少し混ぜたり、砂糖の代わりにお菓子や料理の成分にもなります。
WMSは様々な用途で使えるオールラウンダー
- ワキシーメイズスターチ(WMS)はとうもろこしのでんぷん
- GI値は高く、血糖値は上昇は速いがインスリンの分泌はゆっくり
- 長時間エネルギーを供給可能で、グリコーゲンの回復も早い
- トレーニング前中後や間食など用途が多岐にわたる
ワキシーメイズスターチはまさにオールラウンダーといった感じです。他の一極化したものとは違い、基本的にどのタイミングで摂取しても良い炭水化物のサプリメントですから、トレーニングは勿論、日常生活の食事にも応用可能です。
- デキストリンやマルトデキストリンの効果が感じられない人や合っていないと思われる人
- プリワークアウトやイントラワークアウトの炭水化物を何にしようか迷っている人
- できるだけ間食にインスリンを分泌させたくない人
等は、ワキシーメイズスターチを試してみてはどうでしょうか。
参考文献
- Goodpaster, BH., et al. (1996). The effects of pre-exercise starch ingestion on endurance performance. International Journal of Sports and Medicine. 17(5):366-72.
- Sands, AL., et al. (2008). Consumption of the slow-digesting waxy maize starch leads to blunted plasma glucose and insulin response but does not influence energy expenditure or appetite in humans. Nutrition Research. 29(6): 383–390.
- Jozsi, AC., et al. (1996). The influence of starch structure on glycogen resynthesis and subsequent cycling performance. International Journal of Sports of Medicine. 17(5):373-8.
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