食虫文化、というのは昔から、日本でも世界でもあります。

焼きイナゴとかセミのシチューとか聞いたことはあるかもしれませんが、味については実際に食べてみないとわかりません。

しかし、今回新しく発表された研究では、味についてはともかく、虫に含まれる栄養素はかなり優秀である事を示しています。

バッタ、蚕などの虫は栄養豊富

バッタには多くの抗酸化物質が含まれています。

今回行われた研究では、商業用として売られている虫を対象として、抗酸化物質の含有量の計測・比較が初めて行われました。

バッタや蚕を始めとして、コオロギやサソリ、クモ、ムカデ、テントウムシ、クロアリなど多くの虫が研究対象として選び出され、それぞれの虫を脂肪と他の物質に分けて比較研究が成されました。

もともと研究の前から、虫には多くのタンパク質や不飽和脂肪酸、ビタミン・ミネラル、食物繊維等が含まれている事が知られていましたが、この実験では実際に食品として使われている、1.オレンジジュース、2.オリーブオイルとの比較をする事で、代用可能性の実験が成されています。

オレンジジュースもオリーブオイルも、人間の体に抗酸化作用をもたらす事でよく知られている、抗酸化食品の代表格です。

研究方法

研究者は、商業市場に売られている食用虫と無脊椎動物(ムカデやサソリ)を選び、抗酸化活動と内容量を計測しました。

羽や棘、固い部分などの食べられない部分は取り除き、脂肪と水に溶ける部位との二つに分けて調査しました。

同じようにオレンジジュースとオリーブオイルとにも同じ過程で処理をし、比較をしました。

抗酸化物質含有量ランキング

テントウムシも食用の虫であるようです。

一番多くの抗酸化物質を含んでいた虫は、

  • バッタ
  • コオロギ

の三種類の虫で、オレンジジュースの5倍の抗酸化物質を含んでいたことが判明しています。

逆に、ジャイアントシケイダ(セミ)、チャバネゴキブリ、タランチュラ、サソリは、一番低い含有量を示しました。

勿論、この研究結果で使われ他虫は全て乾燥した、ただの虫のかけらなので、オレンジジュースとはくらべものにならないくらい摂取しにくいでしょう。

それでも、88%の水で薄めた液体にした場合でも、抗酸化物質の含有量はオレンジジュースの75%ほどだと推定されています。

更に、セミと蚕から抽出された脂肪は、オリーブオイルよりも二倍の抗酸化作用を含んでいる事が判明しています。

反面、タランチュラやゾウムシの幼虫、クロアリの脂肪には、あまり抗酸化物質を含んでいないようです。

虫は将来の肉類の代用になるか

この研究のポイント
  • バッタや蚕などの虫の中には、多くの抗酸化物質が含まれている。
  • 飲みやすさや吸収率などがこれからの課題である。

今回の研究で、食用の虫は抗酸化物質豊富に含まれている事が判明されましたが、実際に人体でのバイオアベイラビリティ(栄養の吸収率・使用率)や、食べやすさ・飲みやすさなどの問題もまだ残ります。

これからの研究次第で、環境により良い資源として肉類の代用として食事に取り入れる事ができる可能性もあります。

最初は抵抗があるかもしれませんが、10年後には、普通に食卓にバッタが並んでいる光景が見られようになるのではないでしょうか。

参考文献

  • Mattia, DC., et al. (2019). Antioxidant Activities in vitro of Water and Liposoluble Extracts Obtained by Different Species of Edible Insects and Invertebrates. Frontiers in Nutrition.