今年にスターリング大学から発表されたレビュー調査結果では、陸上競技選手を対象としたタンパク質摂取量の新たな国際基準を提示した。

陸上選手におけるタンパク質摂取量の新たな目安

Sports Nutrition for Track and Field Athletesにて発表された国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations (IAAF))の共同声明の一部が研究成果として公表されている。

陸上選手は、日常的に生理機能に重きを置いた激しいトレーニングを行っており、最適な回復のために栄養補助が必要である。この論文では、トレーニングへの適応、体組成のコントロール、そしてパフォーマンスの最適化のためのタンパク質摂取のメリットに焦点を当てている。

筋量を増やすための摂取量

研究チームが薦めるところでは、筋肉タンパク質の再構成を促すために必要なタンパク質は、体重1㎏につき1.6gほどであるとしている。陸上競技選手等のハイボリュームでトレーニングを行うアスリートの場合は、筋量を増やすために1.6g/kgのタンパク質に加えて、多くの炭水化物と良質な脂質の摂取も欠かせないとしている。

ダイエットをする時の摂取量

カロリー制限を行っており、除脂肪体重をできるだけ減らしたくない陸上競技選手は、タンパク質を一日に1.6g/kg以上~2.4g/kgほどを目安に摂取するべきだと説明されている。

パフォーマンス向上を狙う場合の摂取量

筋肉の維持をしながらパフォーマンスの向上を図る陸上選手は、1.3g/kg~1.7g/kgほどのタンパク質摂取量が最適であると述べている。

ロイシンと食事摂取の重要性

タンパク質合成に必須となるシグナル経路を刺激するアミノ酸として、ロイシンは非常に重要な働きをするため、トレーニング後に摂取する事が推奨されている。

しかし、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン含む)だけの摂取よりも、通常のホエイプロテインサプリメント(全ての必須アミノ酸含む)を摂取した場合の方が筋合成を刺激したという結果もあるため、他の必須アミノ酸も同時に摂取する方が筋合成を最適化できる事が示唆されている。

また、サプリメントだけではなく、通常の食事からのタンパク質を摂取する事も重要であるとされている。通常の食事はタンパク質だけでなく、ビタミン・ミネラルやマクロ栄養素等の栄養密度が高いため、特にカロリー制限をしているアスリートに関しては、栄養欠乏を防ぐためにも有意義であると説明している。

まとめ

  • 筋量を増やすためには一日1.6g/kgほどが最適である。
  • ダイエット中の筋肉維持には1.6g/kg~2.4g/kgが最適である。
  • パフォーマンス向上には1.3g/kg~1.7g/kgが最適である。
  • ロイシンと通常の食事はしっかり摂取する。

陸上競技選手におけるレビュー調査であったが、強度の高いトレーニングを行うパワーリフターやボディビルダーにも同様に反映可能な、意義深い研究結果であった。通説である体重×2gにこだわらずに、状況・身体能力・運動強度に応じて摂取量を変える事も有用だろう。

参考文献

  1. Phillips, M Stuart., et al. (2015).Commonly consumed protein foods contribute to nutrient intake, diet quality, and nutrient adequacy. The American Journal of Clinical Nutrition. 101(6), 1346S–1352S.
  2. Witard, C Oliver., et al. (2019). Dietary Protein for Training Adaptation and Body Composition Manipulation in Track and Field Athletes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism. 1.