L-ノルバリンは、ボディビルダーやアスリートに摂取されているサプリメントに良く入っているアミノ酸の一種です。運動のパフォーマンスを上げたり筋疲労の回復を促すといった効果があります。しかし、L-ノルバリンには、脳細胞を傷つけ、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病等)を引き起こす可能性が示唆されています。

L-ノルバリンの脳に対する危険性

Toxicology in Vitroによって公表された研究では、比較的低い濃度であっても、アミノ酸であるL-ノルバリンは細胞に害を及ぼし、結果的に殺してしまう可能性がある事が示されています。日常の食事の中に存在するタンパク質はアミノ酸を含んでおり、そのアミノ酸は腸内で吸収・放出され、新たなタンパク質を合成するために使われます。一方、L-ノルバリンは人体において単純にタンパク質を合成するために用いられないアミノ酸の一つです。

研究の代表著者である、Kate Sarmadzicは、アミノ酸はアスリートやボディビルダーの間で最も多く消費されていると述べています。「非常にアクティブな人のタンパク質の需要量はより高く、タンパク質はパフォーマンスを改善すると考えられています。サプリメントの中にアミノ酸が入っていることが求められている中で、通常のタンパク質を構築するアミノ酸に加えて、他の『プロテインではない』アミノ酸非タンパクアミノ酸)も摂取されていることになります。」

非タンパクアミノ酸の中には有害なものも含まれ、そのようなアミノ酸は、プロテインを作るアミノ酸を模倣して、体をだまして偽のタンパク質を作らせます。これは、植物が天敵を処理する際に使われる特性です。「植物の中には土壌に非タンパクアミノ酸を放出し、他を殺して栄養を得る事ができる植物もいます。L-ノルバリンは抗菌作用と除草作用を持ち合わせている事が証明されているため、私たちは人間における毒性を調べることにしました。」とSamardzicは述べています。

この研究はヒト細胞におけるL-ノルバリンの毒性に関する初めての調査となり、特に脳細胞の健康への影響を試験を行っている。研究を率いるKen Rodgers准教授は、L-ノルバリンは、最初の段階においては細胞がより多くのエネルギーを生成させるが、後にエネルギーを生成していた細胞機構は傷つけられるのだと言表しています。

L-ノルバリン等のサプリメントを摂取している人たちは、長期的な影響も考えるべきかもしれません。

参考文献

  1. University of Technology Sydney. (2019). Body building supplement could be bad for the brain: People taking the protein supplement L-norvaline should be aware of its potential for harm, scientists say. ScienceDaily. Retrieved from www.sciencedaily.com/releases/2019/02/190207 102627.htm
  2. Kate Samardzic and Kenneth J. Rodgers. (2019). Cytotoxicity and mitochondrial dysfunction caused by the dietary supplement l-norvaline. Toxicology in Vitro. 56, 163-171 Retrieved from https://www.sciencedirect.com /science/article/pii/S0887233318305782?via %3Dihub