ウォータールー大学による研究によれば、高い言語能力は認知症発症のリスクの低下に繋がる事が示されています。

マルチリンガル(多言語)能力は認知症予防に効果的

言語能力・マルチリンガル

研究では、アメリカのシスターズ・オブ・ノートルダム(Sisters of Notre Dame)のメンバーであるローマカトリック教会の修道女325人の健康状態が調査されました。

修道女のデータは、修道女研究所Nun Study)として知られる大規模な研究から習得されています。

調査の結果、4言語以上話せる事ができる修道女の認知症発症率は6%で、1言語しか話せない修道女の31%と比較すると非常に低い値である事が明らかになりました。

しかし、2言語・3言語の能力を持っている場合は認知症のリスクの減少はあまり見られず、これまでに行われた研究とは異なる結果となりました。

修道女研究は自然的な実験で、幼児期から青年期までの非常に異なる生活と、修道院に入った後の似通った生活との対比が行われる独特な研究です。

そのため、通常は個人で異なる社会経済状態や遺伝子等の他の要因を気にかける必要が無く、後の人生の健康における若年期の要因を確認する事ができたと報告されています。

言語は人間の脳内で複雑な能力であり、別の言語に切り替えるプロセスは認知的柔軟性を要します。

4言語以上の能力を習得するために行う精神的鍛錬によって、単一言語話者よりも良い脳内構造が形成される可能性が考えられています。

更に、研究では106の修道女の書き物のサンプルを調査し、より広域な発見物との比較を行う事で、文章言語能力が多言語能力以上に認知症のリスク低下と関連している事を発見しています。

このことから、多言語能力の重要性が示唆されている一方、他の言語能力にも目を向けるべきである事も指摘されています。

参考文献

  • Hack, E E., et al. (2019). Multilingualism and Dementia Risk: Longitudinal Analysis of the Nun Study. Journal of Alzheimer’s Disease. DOI: 10.3233/JAD-181302