「何故同じ霊長類なのにサルやチンパンジーはあんなに痩せてるんだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

サルやチンパンジーといった、同じ霊長類と人は99%のDNAが同じだと言われているのに、人間の方が圧倒的に太っているのには、褐色脂肪に原因があったようです。

人間のDNAと褐色脂肪

太る原因は褐色脂肪の減少にあったようです。逆に増やせば痩せます。

人の肥満には、ジャンクフードや運動不足などの食習慣、生活習慣に依る原因がその割合の多くを占めますが、そもそも人のDNAは脂肪を蓄える事を好むようです。

デューク大学の研究者たちの研究結果によると、チンパンジーと人間の祖先との間には、脂肪細胞の中のDNA配列において重要な変遷があった事が報告されており、それが、人間における「白色脂肪を褐色脂肪に変える力」の減少に繋がったことが示されています。

褐色・白色脂肪を簡単に説明すると:

  • 褐色脂肪(褐色脂肪細胞)→カロリーを燃やす
  • 白色脂肪(白色脂肪細胞)→カロリーを蓄える

ということで、脂肪をつけてしまうという観点から言えば、白色脂肪は「悪い」脂肪であり、カロリーも燃やしてくれる褐色脂肪は「良い」脂肪だと言えますね。

兎にも角にも、その褐色脂肪へ変換する能力の衰えのせいで、人間は太っているのです。因みに、人間の体脂肪率の健康平均が14%~31%に対して、他の霊長類の体脂肪は9%以下です。腹筋がバキバキに割れている状態を維持している人と同じくらいの体脂肪率を常に維持しているんですね。

この研究では、チンパンジーとオナガザル、そして人間のゲノム情報を読み取る事で、脂肪細胞におけるDNAの並びに注目しました。

普通、細胞内のDNAは、タンパク質の周りを巻くように螺旋・輪構造として圧縮されており、あるDNAの区画だけが、遺伝子のスイッチをオン・オフに切り替える細胞機構からアクセスできるように少し緩くなっている、という構造をとっています。

  • アクセス可能であれば、褐色脂肪への変換をするDNAもアクセスされやすくなります。

残念ながら、チンパンジーとオナガザルにおいては、780ほどのアクセス可能なDNAの区画が発見されたのに対し、人間ではそれよりも少ない結果が報告されています。

褐色脂肪へ変換する能力は、人体ではゲノム区画の中にしまい込まれて、閉め切ってしまっているために、十分に発揮できません。

褐色脂肪は熱を放出することによってカロリーを消費するため、低温の気候に体を曝せば褐色脂肪を活性化させる可能性はあるかもしれない、と研究者は言いますが、まだはっきりとした証明は成されていません。

勿論、人間が脂肪を蓄える事に意味はあります。脳を含む内臓の運営や寒さからの保護、飢えの回避などの、生き残るための重要なシステムは、全て脂肪の貯蓄が不可欠なのです。

まあそうは言っても、痩せたい人にとっては白色脂肪は敵以外の何物でもありません。研究者たちは今日も必死に実験を進めて、褐色脂肪を活性化させる方法を探してくれています。

例えば、「コーヒーの褐色脂肪への刺激作用【ダイエットの味方】」で書いたように、コーヒーは今のところもっとも褐色細胞に働きかける効果が高いものの一つとして、研究結果が報告されています。

人間科学の世界は日進月歩。一年後にはもっと多くの研究が良い報告をもたらしてくれるかもしれません。それまでは、コーヒーを飲みつつ、伝統的なダイエットをして待っていましょう。

参考文献

Swain-Lenz, Devjanee., et al. (2019). Comparative analyses of chromatin landscape in white adipose tissue suggest humans may have less beigeing potential than other primates. Genome Biology.