ビタミンAは微量栄養素の一つですが、心臓の病気にも関わっているようです。
ビタミンAがこの過程において重要な統括の役割を担っており、多すぎる・少なすぎるレチノイン酸(RA)は先天的疾患へ繋がる可能性がある事が、研究で明らかになりました。
ビタミンAから心臓病か
南カルフォルニア大学(USC)のケック医学校の研究者らは初期段階の心臓繊維の形成を導くのにキーとなる細胞機構を発見した。初期の形成過程が上手く行われなかった場合には多くの先天性の心疾患が引き起こされる可能性があるものだ。
心臓繊維は一次心臓領域(First Heart Field, FHF)と二次心臓領域(Second Heart Field, SHF)との二つの異なる相から形成される。FHFは左心室(left ventrice)と両方の心房(left and right atrium)の一部を含む領域であり、SHFは右心室(right ventrice)と流出路(大動脈に血液を流す管)から成る領域である。人間においてはこの形成過程は発達段階の4週間目に起こる。研究者たちは動物モデルを使用して、ビタミンAの派生物であるレチノイン酸(RA)がSHF繊維形成と、上行大動脈(ascending aorta)と肺動脈(pulmonary artery)への流出路の分離もしくは分割を統括していることを発見した。
「この研究によって、二次心臓領域の生態へのより深い理解が得られることになった。」と、研究者代表のSucov細胞・神経生物学助教授は述べている。「これでビタミンAがこの過程において重要な統括の役割を担っていること、過多、もしくは過小なレチノイン酸(RA)は先天的疾患へ繋がる可能性がある事が判明した。」
RAは、前駆細胞(多くの異なる細胞の区別化ができる細胞)が心臓細胞へと分化する最初の一歩を踏ませる役割を持つ、信号分子である。研究者たちは特殊な分子マーカーを使い、細胞が流出路を通って必須心臓繊維の形成を始める過程を観察した。
*分子マーカー…血液など体液から採取される分子で、実験いおいて指標となる分子。
流出路を形成するために細胞が移動する過程はコンベアベルトに似ている、とSucov氏は説明する。しかし、RA受容体の不足を持つように変異させた動物モデルでは、全体のプロセスは停止し、流出路は詰まり、列は乱れる結果となった。
SHFの発達が損なわれたとき、両大血管右室起始症(DORV)や騎乗大動脈などの配列欠陥が起こる。SHFの発達における問題は、中隔過程が損なわれることで総動脈幹症として知られる、一つの大血管によって心臓からの排出が行われる状態を作る可能性がある事である。これらの機能不全は幼児に一般的にみられるものである。
*両大血管右室起始症…大動脈と肺動脈の両方が右心室から出ていく先天性心疾患。
*騎乗大動脈…心室を隔てる中隔の上に大動脈が乗っている状態になることで酸素供給障害になる先天性心疾患。
「この既存研究では、ビタミンAの代謝物であるレチノイン酸が、どのようにして初期段階にある細胞を心臓部と主要血管を形作るよう導いているのかを示しています。」と、Martin Pera博士は言及する。
「発達経路における欠陥は、胎児や新生児の重大な先天性の心機能不全を引き起こし、外科手術による治療を施さなければ致命的なものになるでしょう。」
これらの発見がどのように心疾患の治療に生かすことができるかを調査するためにも更なる研究が必要であると、Sucov氏は述べる。研究結果から示唆され、動物モデルで試験された特定の治療法は将来的には進められるだろうとも供述している。
「この研究を通して、疾患の発生を予防する策が実現するかもしれない。」
参考文献
- University of Southern California. (2010). Vitamin A: Key mechanism that guides cells to form heart tissue. ScienceDaily. Retrieved from www.sciencedaily.com/releases/2010/03/1003 17091301.htm
- Brausemann,Anton., et al. (2017). Structure of Phytoene Desaturase Provides Insights into Herbicide Binding and Reaction Mechanisms Involved in Carotene Desaturation. Structure. 25(8). DOI: 10.1016/j.str.2017.06.002