クイーンズランド大学の研究者によって行われた研究では、人間や植物の体内で行われる細胞の自壊(細胞自殺)は、神経変性脳疾患の治療や疾患耐性のある植物の開発へと繋がる可能性がある事を示唆しています。

細胞自殺は脳の健康と食糧保障に重要

細胞

多くの生物の体内には、生命を維持するために自ら死滅する細胞が存在しており、例えば病気に感染した細胞は自滅し、他の細胞に影響を及ぼさない事で生命を存続させる事を可能にしている、免疫機能としても重要な役割を担っていシステムが「細胞自殺」です。

今回行われた研究では、人間の神経における細胞死に関わるタンパク質を調査する事で、人間と植物での細胞自殺が起こる一般的な仕組みを発見しています。

研究チームは、構造的生物学、生物化学、神経生物学、植物科学を用いて細胞とタンパク質を解析する事で、SARM1と呼ばれる、神経変性疾患に関わる脳機能停止に重要となるタンパク質を見つけました。

SARM1に関する三次元的構造を明らかにしたことで、脳機能の停止を遅延・阻害する薬の開発の促進に貢献した事が主張されています。

更に、細胞死のプロセスへの理解は疾患耐性のある植物の開発に繋がり、生産物産出量の増加や廃棄物の低減、そして食糧保障の支援にも貢献することが示されています。

植物疾患は、年間の農作物損失の15%を占めており、食糧保障問題の一端にもなっています。

特定の抵抗遺伝子は植物を病気から保護する事が判明していますが、それらの遺伝子の産物がどのように働いているのかは理解されずにいました。

今回の研究によって、抵抗力の一つである感染細胞の自滅が植物で行われるプロセスが判明したため、作物疾患の保護に役立つ効果的な人口抵抗遺伝子の作成へと一つ歩を進める事が出来たようです。

参考文献

  • Horsefield, Shane., et al. (2019). NAD cleavage activity by animal and plant TIR domains in cell death pathways. Science. University of Queensland.