研究の結論

  1. 質が高いタンパク質を摂取した場合には、質が低いタンパク質を摂取した場合と比較して、食後の筋タンパク合成およびトレーニング後の筋タンパク合成の上昇率が非常に高い
  2. 質の高いタンパク質の摂取によって、長期的な筋力トレーニングによる筋力の上昇値も増加する
  3. 長期の筋力トレーニングによる除脂肪体重の変化は、タンパク質源・質の違いによる影響はない

タンパク質の摂取源と質は筋タンパク合成に違いを及ぼすか

2021年の7月に刊行されたThe Journal of Nutritionに収載された研究では、食事から摂取するタンパク質の摂取源と質が筋タンパク合成に及ぼす影響、また、筋力トレーニングを行った際の除脂肪体重と筋力の変化を調べています。

この研究では、システマチックレビューとメタアナリシスと呼ばれる、テーマに関連した今までの研究結果を見直し、再検討することで全体の傾向や共通項を見出す研究方法です。

メタアナリシスで調査されたタンパク質の摂取源は、ホエイプロテインアイソレート、カゼインプロテイン、スキムミルク、牛肉のミンチ、牛乳、大豆、小麦、加水分解ホエイプロテイン、コントロールドプロテイン(低質プロテイン)などの、サプリメントと日々のタンパク質源となる食品です。

また、長期の筋力トレーニングを組み合わせた研究の多くは、8〜16週間の研究期間を取り、トレーニングとして1筋肉部位のみ(レッグプレス、レッグエクステンション)の研究から全身トレーニング、持久トレーニングを組み合わせたものなど、複数の種類に分かれています。

タンパク質の質の基準となるのは、主にアミノ酸組成(必須アミノ酸バランス)と、体内での消化吸収率です。

ホエイプロテインなどは必須アミノ酸バランスと消化吸収率が両方高いため、「質が高い」と判断され、小麦や牛乳などは必須アミノ酸バランスに偏りがあるため、「質が低い」と判断されます。大豆は必須アミノ酸バランスは良い一方で、消化吸収率が低いため、ホエイプロテインよりも質が劣っていると判断されます。

調査結果

調査結果では、質が高いタンパク質を摂取した場合には、質が低いタンパク質を摂取した場合と比較して、食後の筋タンパク合成およびトレーニング後の筋タンパク合成の上昇率が非常に高いことが示されています。

また、質の高いタンパク質の摂取によって、長期的な筋力トレーニングによる筋力の上昇値も増加することが示唆されています。

しかし、長期の筋力トレーニングによる除脂肪体重の変化は、タンパク質源・質の違いによる影響はないと結論されました。

これらの結果は、研究に使用された被験者の年齢(18〜35歳、60歳以上の成人)とは相関関係がないとされています。

除脂肪体重の測定に関しては、体脂肪の測定よりも難を用するため、現在の測定方法では正確に筋繊維の増加傾向を調査することができないという制限があります。

また、それぞれの研究によって、筋繊維中の筋タンパク合成を測定したものと、筋繊維以外の部位も含む筋タンパク合成を測定したものに分かれており、今回の調査ではそれらを区別しなかったため、不確定要素となったようです。

今回の調査の制限としては、

  • サプリメント形式のタンパク質源(ホエイプロテインなど)との比較が多いこと
  • 対象の食品群が少ないこと
  • 低質のタンパク質の組み合わせによる必須アミノ酸バランスの改善を考慮していないこと
  • 筋力トレーニング種目と期間に制限があること

などが挙げられています。

今回の調査で筋タンパク合成、筋力、除脂肪体重の3つの項目に対してそれぞれ結論が出されていますが、より食品の種類や質を増やし、上記の制限を減らした研究が必要だとされています。