私たちが普段から食べている白米やパンは、穀類と呼ばれる食品目に分類されています。
三大穀物と呼ばれる米・小麦・とうもろこしをはじめとして、世界中の多くの人にとって欠かせない穀類にも、意外と知られていない成分の特性や特徴があります。
今回は、穀類を種類ごとに解説していきます。
米の成分特性
米は炭水化物が多いため、人間の主要なエネルギー源として使われます。
精白米100g中には356kcal含まれていますが、実際にお茶碗1杯程度(150g)のご飯の中に含まれているカロリーは250kcalほどです。
米の中に含まれている主要なタンパク質は単純タンパク質のオリゼニンです。
アミノ酸スコアは65と比較的低く、特にリジンの含有量が低いです。
米100g中には1gほどしか含まれていませんが、その脂質が酸化することで、コメからは古米臭と呼ばれる独特の匂いがするようになります。
米に含まれるミネラルやビタミンなどの微量栄養素には、カリウム、リン、カルシウム、鉄、ビタミンB1、B2、ナイアシンなどがありますが、これらのミネラルは主に糠層や胚芽に存在しています。
そのため、糠層や胚芽を取ってしまった後の精白米にはほとんどミネラルやビタミンは残りません。
玄米は、精白米+胚芽+糠層からなり、コメの栄養を満遍なく摂取することができます。
また、胚芽米は、精白米+胚芽からなっています。
米の搗精
米の搗精とは、米の元の状態(玄米)から、糠層を取り除く作業のことを言います。
下の表のように、玄米から精白米に行くに従って、糠層は少なく、胚芽も取り除かれてゆきます。
米を搗精していくにしたがって、米の色は白くなっていきます。
玄米の方がビタミンやミネラルなどの微量栄養素や、食物繊維が多く含まれていますが、精白の過程で米は人体で消化吸収されやすくなっていきます。
また、玄米と精白米の中間に位置する三分づき米・五分づき米・七分づき米はそれぞれ少しづき柔らかさや甘さなどに違いがあるため、異なった用途に使用されます。
ライスピア米蔵より
米の貯蔵
玄米で貯蔵→温度や湿度の条件が揃うと呼吸が始まり、発芽や呼吸活発により成分が分解(品質低下)します。
成分が分解されていくと古米化し、米に含まれる油脂(リノール酸など)が酸化し、ペンタナールやヘキサナールが生成されます。
貯蔵環境としては、10〜15℃、湿度は70〜80℃の低音貯蔵が適しています。
また、二酸化炭素(炭酸ガス)での封入により質の保持が可能になります。
米の加工品
米の加工品には、以下の表にまとめられているように、団子や求肥、もちなどに使用されます。
食品の表示には、もち米(餅米)or白玉粉・求肥粉、うるち米or上新粉、のどちらかの名前で表示されていることが多いです。
だんごや求肥には、同じ原料が使われていると間違えられることが多いですが、それぞれうるち米ともち米といった違う種類の米が原料として使われています。
うるち米は、アミロースとアミロペクチンの割合が2:8ほどですが、もち米はアミロペクチンが10割なので、似ているようで、成分的には大きな違いがあります。
アミロースとアミロペクチンはどちらもデンプンの成分ですが、アミロースはグルコース(糖)が直線上につながってできている一方、アミロペクチンはグルコースが枝分かれをしてつながっています。このグルコースの繋がりの違いで、アミロペクチンはアミロースよりも、体に早く吸収されます。
また、アミロペクチンは独特の粘り気があるため、米の中のアミロペクチンが多いほど粘り気のある米となります。餅の粘性は、アミロペクチンが多いもち米を使って作られているためです。
小麦の種類と成分特性
小麦はイネ科ウシノケクサ亜科のコムギ属に属してます。
小麦の粒の切断面の状態によって、軟質小麦、中間質小麦、準皇室小麦、硬質小麦に分けられます。
小麦も米と同じように炭水化物が主な成分ですが、米と違い脂質やタンパク質の含有量が多いです。
また、米の糠層や胚芽と同じように、小麦の粒はブラン(ふすま)と呼ばれる外皮に包まれている他、小麦胚芽と呼ばれるタンパク質やビタミンE、B群が含まれる部位が小麦の粒に含まれています。
小麦の利用
小麦の用途は非常に広く、日常生活で見られる食品の多くに小麦の粉(小麦粉)が使用されています。
パンには強力粉、中華麺には準強力粉、他の麺類には中力粉、ケーキなどの菓子類・天ぷらには薄力粉が使われ、それぞれの粉はさらに1等粉と2等粉の2種類に分かれています。
因みにパスタに使用されるデュラム小麦と呼ばれる小麦の種類には、タンパク質が多く含んでいます。
小麦粉のタンパク質
小麦粉には、小麦粉の粘着性を作るグリアジン、弾力性を作るグルテニンが含まれています。
この小麦粉に水を加えてこねると、グリアジンとグルテニンのが結びつき、網目状の物質を形作ります。
この物質が、「グルテン」と呼ばれる、粘着性と弾力性を持つタンパク質です。
パン
パンの材料として小麦粉は使われますが、ヨーロッパタイプ(リーンブレッド)と、アメリカタイプ(リッチブレッド)に分かれます。
- リーンブレッドの材料:小麦、水、イースト菌(パン酵母)、食塩
- リッチブレッドの材料:小麦、水、イースト菌(パン酵母)、食塩、卵、油脂類、砂糖など
それぞれの出来上がりの特徴として、リーンブレッドは表面が硬く仕上がり、フランスパンがこのリーンブレッドに当たります。
一方、リッチブレッドは柔らかく仕上がるため、食パンなどにリッチブレッドの材料に使われます。
大麦の概要・加工品
大麦は、他の穀類と同様にイネ科に属しています。
大麦には、穂に粒が2列だけ並ぶ二条大麦と、6列並ぶ六条大麦があります。
- 二条大麦の加工品:ビール、麦焼酎、ウイスキー等
- 六条大麦加工品:押し麦、麦茶、麦みそ等
大麦の加工品を作る過程・原料はそれぞれ異なっています。
とうもろこしの種類と成分
とうもろこしも、他の穀類と違わずイネ科に属しています。
日本人には穀物としてはあまり捕らえられていないとうもろこしですが、米と小麦に続く三大穀物の1つです。
とうもろこしには色々な品種や種類があり、それぞれ形や色が異なりますが、主な分類としては:
- 甘味種(スイートコーン)
- 硬粒種(フリントコーン)
- 馬歯種(デントコーン)
- 爆裂種(ポップコーン)
- 軟粒種(ソフトコーン)
- もち種(ワキシーコーン)
の6種があります。
主成分はデンプンで、タンパク質を8%、脂質を5%程度それぞれ含んでいます。
とうもろこしとナイアシン欠乏症
主要タンパク質としてツェイン、グリテニンなどが含まれていますが、とうもろこしのアミノ酸スコアは15と、かなり必須アミノ酸のバランスに偏りがある穀類です。
必須アミノ酸の中では、特にリジンとトリプトファンが少なく、とうもろこしばかり食べていると、ナイアシン欠乏症(ペラグラ)を発症しやすくなります。
これは、ナイアシンは人体でトリプトファンから合成されるためです(研究)。トリプトファンが体にないと、ナイアシンが作れないわけですね。
現代ではとうもろこしだけしか食べず、動物性タンパク質をあまり食べない食事習慣はあまり見られませんが、昔はアメリカなどとうもろこしを主要穀類として食していた国でナイアシン欠乏症の発症が多く確認されていたようです。
そばの特徴
そばは他のイネ科の穀物とは違い、タデ科に属しています。
そばには栽培されている種類として2種類あり、普通そばと、韃靼そばとそれぞれ呼ばれます。
- 普通そば:主成分はでんぷん、タンパク質の含有量が比較的高い。
- 韃靼そば:普通そばより種子が小さく、そば粉は黄色。ルチンが普通そばの100倍含まれている。
植物に含まれるフラボノイド色素の1つで、抗酸化作用、血圧効果作用、血管収縮による出血防止作用などがあるとされています。
そばのデンプンは、70%がアミロペクチン、30%がアミロースで構成されているため、体内での消化吸収が比較的緩やかです。
そばにはタンパク質のグロブリンが多く含まれ、免疫作用や肝臓の機能の保持、などに役立ちます。また、グルテンの形成がないため、海外でもグルテンフリーの穀物として注目を浴びています。
アミノ酸スコアは100なので、全ての必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。
他の雑穀について
雑穀とは、粟、ライ麦、稗(ひえ)、そば(タデ科)、えん麦、アマランサス、きび、ハトムギ、もろこしなどの、イネ科に属していない穀類のことを指します。
日本では、健康食品として、ライ麦入りのパンやオートミール、雑穀入りご飯などが販売されていますが、あまり主食として利用されることは多くないと思います。
世界的には、発展途上国を中心に重要な食料資源として食されている他、小麦などのアレルギー食品の代替としても使われます。
小麦などの主要穀物に含まれているグルテンを摂取すると、自己免疫反応を起こして消化吸収器官に問題が起こるセリアック病を抱える人が世界には多くいます。
そのような方にとっては、グルテンを含まない(グルテンフリーの)雑穀は非常に有用なものです。
まとめ
今回紹介した穀物には、それぞれ特徴がありました。
- 米(古米臭、胚芽と糠層)
- 小麦(グルテンを形成、等級)
- 大麦(二条大麦と六条大麦)
- とうもろこし(三大穀物の1つ、ナイアシン欠乏症)
- そば(グルテンフリー、アミノ酸スコア100)
- 雑穀(グルテンフリー、世界で重要な食料資源)
全てを詳細に解説したわけではありませんが、少し穀物に関して知ることができたのではないでしょうか。