ボディビル・フィジーク等の大会1週間前〜当日までにするべき本当のこと6つ

このサイトにたどり着いた方は、おそらくトレーニングを始めてしばらくし、フィジークやボディビルディングの大会に興味を持った方、もしくは出場しようと思っている方、すでに競技歴がある方などが多いと思います。

大会に近づいてくると、ボディビルダーたちが考えることの1つは、ピークウィーク(peak week)と呼ばれる、会から1週間前から当日までの一番細部にこだわらなければいけない時期のことであると思います。

なぜピークウィークは重要なのか?

コンテストの1週間前ほどになると、選手たちはカーボディプリート(低炭水化物ダイエット)を始めたり、そのあとのカーボローディング(炭水化物の摂取)、水分や塩分の制限などをして大会当日にベストなコンディションで挑むために調整に調整を重ねます。

そのため、減量の最後の調整として、ピークウィークを最も重要な時期であると考える人もいます。

さて、いろいろなことがピークウィークには起こり、失敗を経験する人もいれば、成功して大会当日に素晴らしい体をステージに持ってくることができ人もいますが、本当に必要なことはなんなのでしょうか?

ボディビル・フィジーク大会1週間前から当日にするべき本当のこと6つ

1. ピークウィークは脂肪を落とす週ではない

まず最初に、大会当日に最良のコンディションで挑むには脂肪を骨の髄まで削ぎ落とさなければいけません(極端すぎですがそれくらいの覚悟で)。

大会1週間前に体が仕上がっていないからといって、水分を抜いたり塩分を制限したりして体の脂肪が魔法のように1週間の間に消えていくわけではありません

つまり、1週間前には体はほぼ仕上がりに近い状態になっていないといけないということです。

確かに、数日間カーボディブリートをして体をひたすらに追い込めば、炭水化物をほぼ摂取しないことで多少脂肪を削ることはできるかもしれません。

しかし、カーボディプリートはその後のカーボローディングをするためのもので、脂肪を落とすための方法ではないのです。

だから、ピークウィークに「体の脂肪を落とす週」と考えるのは間違いで、「体を大会に出るために調整する時期」と考えるべきだと思います。 

カーボディプリートとカーボローディング

カーボディプリート(carb depletion)とカーボローディング(carb loading)とは、ボディビルディングやフィジークの大会に出場する選手が大会の前に行う体の調整方法です。

カーボディプリートでは、数日間〜1週間ほどの期間、炭水化物の摂取量を極端に減らし、タンパク質と脂質からのカロリー摂取だけでトレーニングや有酸素運動をおこいます。

この期間は、できるだけ筋肉からグリコーゲン(筋肉にエネルギーの形で蓄えられている炭水化物)を絞り出して、枯渇(deplete)させることを目的にトレーニングをするため、トレーニング強度よりもトレーニングのボリューム(レップ数やセット数)を高くすることが多いです。

なぜグリコーゲンを枯渇させるのでしょうか?

それは、次に行うカーボローディングで筋肉を通常以上に大きく見せるためです。

筋肉のグリコーゲンが枯渇し、全くエネルギー源がない状態の所で急に炭水化物を摂取すると、スーパーサチュレーション(過飽和、supersaturation)と呼ばれる現象が起こり、通常体がグリコーゲンを筋肉に蓄える貯蔵限界以上に筋肉に蓄えることができるようになるのです。

このために、カーボディプリートで筋肉をグリコーゲンフリーの状態にした後に炭水化物を摂取して、大会までに筋肉をベストな状態に膨らませることが可能なカーボローディングを行うのです。

2. 大会1週間前には体を仕上げておく

体を仕上げるといっても、フィジークやボディビル、アマチュアやプロでゴールが違うかもしれません。

フィジークの選手も確かに絞りが必要ですが、ボディビルダーのように大臀筋にいくつもの筋が入っていたり、恐ろしいくらいの筋肉の分かれ目がある必要はありません。

アマチュアとプロでも、もちろん絞り具合が違いますし、筋肉の大きさによっては絞りすぎて筋肉のサイズが小さく見えてしまう、といったこともアマチュアの選手ではあると思います。

ただ、どちらにせよ脂肪を一定以上まで落とすことは最低条件で、それはピークウィークまで、少なくとも大会1週間前までに行わなければいけないことです。

3. 水分は一定の量

多くの人は水分を大会の前日や前々日に摂取せず、体から水分を出すことで筋肉の仕上がりをよりよくしようと試みますが、その結果筋肉の張りがなく、ステージの上で小さく見えてしまうことがあります。

コーチなどを雇っている人や、長年経験のある人であればどの程度水分を摂取すれば良いかなどを理解できるかもしれませんが、その時その時体の見え方は違ってくるものです。

そのため、大会1週間前から水分は毎日一定の量を飲むようにします。

大会が日曜日にあるのであれば、その前の日曜日〜金曜日までは、例えば4リットルの水を毎日継続的に飲み、それで体がどのように見えるかを確認します。

もし4リットルの水で金曜日に筋肉に張りがないように見えるのなら、土曜日(大会の前日)は5リットルに増やすこともできますし、逆に体が水分を蓄えているように見えるなら3リットルに減らすこともできます。

ですから、大会1週間前から前日や前々日までは継続して同じことを行うことで変化を減らすことが大事です。

4. 塩分やカリウムの量も一定に保つ

塩分を抜いたり、カリウムを摂取することもボディビルダーのコンテスト準備にはよく行われることです。

なぜボディビルダーは大会前に塩分を抜くのか

塩分(ナトリウム)は水分(H2O)と非常に結びつきやすいため、塩分を摂取すると細胞外の液体が体にたまりやすい状態になります。塩分の過剰摂取が高血圧に繋がるのは、このナトリウムの水分を貯める作用があるからです。

そのため、過剰なナトリウムを大会前に摂取している場合は、水分がたまって体が膨らんだように見え、引き締まった見た目をステージで見せることができなくなってしまうことがあるのです。

そのために、大会当日の3日前〜前日ほど、塩分を制限する選手がこれまでに多くいました。

なぜカリウムを摂取するのか

カリウムは体が水分を貯めるのを2つの方法で防いでくれます(研究):

  1. 体内のナトリウムのレベルを下げる
  2. 尿の生成を促す

このような特性を持っているため、カリウムはボディビルダーがコンテストの前に水分をできるだけ排出するための手助けをしてくれます。

カーボローディングを行なっているボディビルダーがよく食べるものでカリウムが多い食べ物はバナナやサツマイモですね。

塩分もカリウムも摂取量を変える必要はあまりない

塩分を抜くと少し体が締まって見えるかもしれませんが、筋肉を大きく見せるために十分な量の水分まで抜けてしまって、ステージの上で筋肉がフラット(しぼんで)に見える危険が高いです。

筋肉がソフトで張って見えない原因は、体に脂肪が残っている場合もありますが、筋肉に十分な水分がないことである場合が多いのです。

また、塩分は炭水化物を筋肉に蓄える時に必要なミネラルでもあります。筋肉を大きく見せるためには、塩分+水分+炭水化物(糖質)の3つの要素が全て揃っている必要があります

筋肉に十分な量の水分があれば、筋肉は体の内側から張り出し、より筋肉のディテールやカットを際立たせてくれるため、筋肉がステージの上でフルであるのはマストです。

ですから、わざわざカリウムを特別に摂取したり、塩分を極端に抜いたりする必要はなく、1週間を通して摂取量は一定で良いのです。

もしも筋肉に全く張りがなく、筋肉のパンプアップも感じられないことがあれば(過度なストレスなどが原因で起こります)、少し塩分の摂取量を増やすのも良いと思います。

ですが、基本的にはカリウムも塩分の摂取量も一定の量を保つのが安全であると言えます。

5. カーボディプリートを行うか慎重に検討する

もし、コンテスト1週間前まですでに非常に苦しい減量を行い、体が引き締まっているの状態なら、すでにその人は炭水化物が「ディプリート」している状態だと思います。

その状態でディプリートをする必要はありません。

カーボローディングをすれば、前述した「スーパーサチュレーション」が起こり、コンテスト前に少しは筋肉の張りを改善することができるかもしれません。

しかし、炭水化物をどの程度摂取するかは経験を積んだ選手でしかわからない上に、極端に食事内容を変えると体のコントロールが効かないことが多いのです。

もし1週間前の状態でまだ体に脂肪が残っているように感じるのであれば、最後のプッシュとしてカーボディプリートをするのも1つの方法ですが、基本的には食事を極端に変えるのは「安全」な方法とは言えません。

炭水化物は1週間かけて徐々に増やす

もしも1週間前の状態ですでに体の状態がステージに立つことのできるコンディションであれば、カーボディプリートを行う必要はありません。

代わりに、それまで摂取していた炭水化物量から、1週間かけて徐々に増やしていきます。

少し体に水分が溜まってきたのを感じた時点で、炭水化物の量を減らすか水分の摂取量に調整をかけるかをすれば、シンプルに筋肉をフルな状態にもっていくことができます。

もし1週間前までに脂肪が落ちきってなかったら?

大会1週間前には体の脂肪は落ちきっている必要があると言いましたが、もし完全に体が絞りきれていない場合は、水分をカットしたり塩分の量を調節することでステージの上でより良く見せるための「トリック」ができることもあります。

脂肪がまだ十分に落ちていない時は、大会3日前〜前日まで減量を続けます。それとともに、水分と塩分の摂取量を変えます(人によって変える量が違います)。

体にはホメオスタシスと呼ばれるシステムがあり、体に起こっている状況や周囲の環境に自動的に適応しようとしてくれます。この「トリック」はホメオスタシスを利用して、大会直前に体に変化を起こす方法です。体に脂肪がたまっている状態で行っても効果は多少あるため、一時しのぎではありますが、ステージ上でそれなりに良い体で出場できる可能性は上がります。

水分についての大まかな流れ1. 水を大会前日まで毎日たくさん飲む。これによって体から排泄される水も多くなる。2. 大会前日(24〜36時間前)に完全に水を取らないようにする。ホメオスタシスによって排泄される水の量は同じ。体からどんどん水が抜けていく。3. 筋肉のコンディションによって、ステージに上がる2−3時間前から水を少しずつのみながら様子を見る。

塩分についての大まかな流れ1. 塩分を大会2日前に完全に抜く(食品に自然に含まれる塩分は大丈夫)。2. 塩分が体から無くなると水分の抜ける速度も上がる。前日に水を取らないようにすることとのシナジー効果が生まれる。3. ステージにあ上がる24〜12時間前ほどから(もしくは筋肉が痙攣してきたり引きつりを感じたら)塩分を体に取り入れ始める。人によって量は変わるが、6〜12g(2400〜4800gのナトリウム)程度の非常に多くの塩を摂取する。

具体的な数字は上げてはいますが、あくまで目安で、人によって時間や量は変わるため、やってみないとわからないところが多いです。この方法はプロのボディビルダーも使用している方法ですが、初心者が行うと逆効果になることもあるため、今回は「絞りきれてないけど少しでもステージの上で良い体を見せたい」と思う方に対して説明しました。安全な方法ではありませんが、実験的にこの方法を行うのも、良い経験になると思います。そういった経験が自分の体と向き合うための土台にもなっていきます。

6. 大会前日はパンプアップトレーニングをして体の状態を確かめる

大会の前日や前々日は全くトレーニングをせず、炭水化物を摂取してリラックスし、大会に備える、という人が多いと思います。

もちろん、それは間違いではなく、コンテスト前にストレスを体にかけずに体がリラックスできる状態・環境を作って体に張りを出させるのは大事なことです。

ただ、どの程度筋肉にグリコーゲンが溜まっているか、十分な水分と塩分があって筋肉の張りをかんじることができるか、などは、ステージに上がる時の筋肉がパンプアップした状態でないと確認できません。

ですから、大会の前日、特に前夜はパンプアップトレーニングを行い、体の状態を確認することを勧めます。

通常のオールアウトするハードなトレーニングでなく、筋肉がパンプアップする程度の、上半身のみのトレーニングを行うことで、筋肉がどの程度反応するかを確認することができます。

もししっかりとパンプアップし、非常に良いコンディション・バスキュラリティを確認できるなら、炭水化物量や水分量、塩分量が最適であると言えるでしょう。

もしもパンプアップがうまくいかず、筋肉がフラットに見えるなら、水分量か塩分を増やすことで修正を加えることもできます。

コンディションが良いか悪いかを大会当日になって確認したとしても、調整・修正がすぐにできない状態である可能性があるため、確実に体のコンディションを確認するためにも前日にパンプアップトレーニングを行うと良いです。

まとめ

さて、大会の1週間前から前日まで行うべき本当のことを書き連ねてきました。

  1. ピークウィークはコンテストに向けて体の「調整」をする週
  2. 体は大会の1週間以上前に仕上げる
  3. 水分の量は一定に保つ
  4. 塩分の量も一定に保つ
  5. 十分体が絞れているなら、カーボディプリート必要はない(炭水化物の摂取量は1週間かけて徐々に増やす)
  6. 大会前日は筋肉の状態を確認するためのトレーニングをする

状況や環境によってアクシデントが起こる可能性を鑑みて、ピークウィークに特別なことをするよりも、「一定して同じことを行う」ことを意識するべきだと思います。

それによって、体の状態や周囲の環境によって変化が生じた場合にも調整や修正が可能です。

最後に、完璧な体をどの選手も目指しますが、完璧を意識しすぎると大会へのプレッシャーやストレスのレベルが高まって、体の状態に影響を及ぼす可能性があります。

ですから、完璧を目指すよりもしっかりとこなすべきことを順序立てて1つ1つ丁寧に行うことが大会で自分の一番良い状態を見せることができると思います。

おまけ(失敗談)

筆者が初めてクラシックフィジークの大会に出場した時は、従来のカーボディプリートに加えて、大会前日までの水分や塩分の量も変えるといったことを行いました。失敗したのは、カーボローディングと水分・塩分調節です。

大会の前日には水分と塩分を完全に抜いて炭水化物を摂取していたため、カーボローディングをしているはずなのに全く体が張ってこないという苦い経験をしました。また、塩分は大会前日の夜から摂取し始めましたが、ほとんどライスケーキしか食べていなかったため、筋肉に蓄えられるはずの水分を全く摂取していませんでした。大事なことなので再度言いますが、グリコーゲンが筋肉に蓄えられるためには、水分と塩分が必要不可欠なのです。

結果、ステージ裏でのパンプアップではうまく筋肉が張らず、ステージの上ではあまり良くは見えなかったと思います。良い経験にはなりましたが、こういった特別なことを行うのは、少なくともボディビル初心者には難しいことだと思います。ですから、もし大会経験が浅いようでしたら、この記事で説明したように大会の1週間前でもあまり特別なことはしないことをお勧めします。