この記事は、今まで化学・生物を全く習って来なかった、もしくは習ったけれど忘れてしまったという人のために、化学・生物の基礎を著者と共に勉強していくものです。
今回は、世界を形作る原子の構造と、イオンについて少し解説します。
原子・イオン
ヒトの体は約37兆個の細胞でできていると言われ、1つ1つの細胞は、たんぱく質や脂質、核酸などの分子でできています。
さらに細かく分子を見てみると、C、H、Oなどで示される原子という細かい粒で構成されています。
「原子」という言葉は分子を構成する細かい粒を1つ1つを指しますが、原子1つ1つの種類に注目する場合は「元素」と呼ばれ、これがC、H、Oなどを「元素記号」と呼ぶ時に使われます。
この記事では曖昧になるのを防ぐため、全て「原子」と呼んでいきます。
原子の種類・構造
原子は100種類以上存在していますが、基本的な原子は以下の14個です:
- 体の組織を作る要素としての原子:炭素(C), 水素(H), 酸素(O), 窒素(N)
- 体液(血液、細胞液など)に溶けている要素としての原子:ナトリウム(Na), カリウム(K), 塩素(Cl), カルシウム(Ca), マグネシウム(Mg), リン(P), 硫黄(S)
- そのほかの原子:鉄(Fe), ヨウ素(I), 水銀(Hg)
原子を形作っているのは、陽子(proton)・中性子(neutron)・電子(electron)です。
陽子と中性子は「原子核(nucleus)」と呼ばれる原子の中心部分の中にあり比較的重い粒子です。

一方、電子はその原子核の周りを衛星のように回っているとても軽い粒子です。
陽子と電子はそれぞれプラスの電気・マイナスの電気を持っており、原子の中に陽子と電子が同じ数あると、電気的に安定した状態であると言えます。
原子の種類によって陽子・中性子・電子の数は変わりますが、陽子の数=電子の数=原子番号となるので、例えば水素原子の原子番号は1なので、水素原子の中には陽子・電子共に1個ずつしかありません(水素の場合は中性子を持ちません)。
電子の殻と陽イオン・陰イオン
上の図で「K Shell」と書かれたものは、殻と呼ばれる、電子が通る軌道のことを指します。それぞれの殻には電子が入れる数の上限があります。
殻の種類には、
- K殻(一番内側の軌道、電子は2個まで)
- L殻(二番目の軌道、電子は8個まで)
- M殻(三番目の軌道、電子は8個まで)
があり、合計18個の電子が飛び回ることができます。もし電子が18個以上になる場合は、さらに外側のN殻まで電子は移動します。
それぞれの軌道が上限まで満たされている状態である時に、物質は安定していることになります。そのため、原子は安定しようとして、他の原子と協力して電子の移動を行います。
例えば、食塩としてよく知られている塩化ナトリウムは、NaClでナトリウム(Na)と塩素(Cl)が合わさってできたものです。
Naの原子番号は11であるため、2, 8, 1の順番で電子が入り、M殻に電子が1つだけになってしまいます。この1つがどこかにいけば、安定することができるのに、と悩んでいる状態です。
一方、Clは原子番号が17で、M殻に7個の電子があります。後1つ電子をもらうことができれば、安定できる状態です。
ここで、NaからClへと電子の受け渡しが行われ、Naは電子を1個失い、陽子の数が1つ多くなるため、プラスのイオン(陽イオン)となります。Clは電子を1個受け取り、電子の数の方が多くなるため、マイナスのイオン(陰イオン)となります。
陽イオンと陰イオンはプラスとマイナスの電極の性質で引きつけ合うため、NaとClが結合して(イオン結合)NaClの完成です。